日本とフィンランドの違い から読み解くCoparenting
Co育てPROJECTのCoのひとつである、「Coparenting(コペアレンティング)」。聞きなれない言葉ですが、子育てをするにあたって、そして子どもにとっても、とても大切な考え方なのです。今回はこのCoparentingについて少しお話したいと思います。
一緒に協力して子育てする=Coparenting
Co=一緒に
Parenting=子育てする
2つの意味をくっつけて成り立つ「Coparenting」。
共働きの子育て先進国である米国で提唱された育児概念で、パートナー間のコミュニケーションや育児協同を推奨し、パートナー間の子育て環境を良好にするための考え方です。
欧米にはその考え方が人々や社会全体に浸透しており、そのスタートは子どもが生まれてからでなく、赤ちゃんが生まれる前、すなわち妊娠期から取り組むことが推奨されています。そして、妊娠期から始まるパートナー間のコミュニケーションが、その後の子どもの成長に影響を与えることが近年の研究で分かってきています(※1)。
一緒に子育て?言ってることはわかるけどどういうこと?
ということで、「Coparenting」を紐解くため、Glicoは日本と育児先進国であるフィンランドの両国において、12歳以下の子供を持つ男女計600名を対象とした「妊娠期・育児期のパートナー(パパとママ)に向けた意識調査」を実施してみました(※2)。
まず、「Coparenting関係尺度(※3)」という世界基準の尺度を用いて、日本とフィンランドの数値を比較してみました。このスコアが高いほど、パートナー相互で育児を協同して行っていると判断することができます。結果は…
残念ながら日本が3.82に対し、フィンランドは4.19という結果でした(「Coparenting関係尺度」は、0~6点で点数化されます)。
【Coparenting関係尺度の7つ観点】
1 育児の合意:育児への考え方が近いか
2 育児による親密性:育児を通して夫婦の関係性が強化されていると感じるか
3 子供の前でのもめごと:子どもの見えるところでもめる(喧嘩する)ことがあるか
4 サポート:お互いサポートしあいながら育児を行っていると感じているか
5 阻害:パートナーから自分が行う育児について批判されていると感じているか
6 パートナーの育児の承認:パートナーの育児を肯定し、支持しているか
7 家事・育児の分担:家事・育児の分担が公平であると感じているか
関係性の中でコミュニケーションに関する項目をみると、フィンランドが日本を大きく上回っており、“パートナー相互の育児方針が同じ”と感じている割合が25ポイント差(日本55.7%・フィンランド:81.3%)、“パートナーが的確なサポートをしてくれる”と感じている割合が16ポイント差(日本54.0%、フィンランド:70.0%)という結果になりました。
どうもコミュニケーションを通じた意識の通じ合いに特に差が生まれているようです。
では、次からその「パートナー間のコミュニケーション」について、妊娠期/育児期での調査結果を見てみたいと思います。
生まれる前と生まれた後、あれ?違う…!?
妊娠期(赤ちゃんが生まれる前)、パートナー間で密にコミュニケーションするフィンランド(77.7%)に比べ、日本は60%と低い結果が出ていますが、生まれてからはフィンランドも日本も同じくらいの割合になっていることがわかりました。生まれてからは赤ちゃんのお世話なのでどうしても会話量が少なくなってしまうのでしょうね。でも、生まれる前にこれだけの量の割合の違いが出ていることにも驚きです。
次に、どんなことを話しましたか?という内容(質)についても聞いてみたところ…
「育児の話をパートナーと共有したり、教え合ったりしていますか?」という質問項目での結果ですが、妊娠期、育児期ともに、日本はフィンランドに比べて低い割合となっています。社会保障制度が異なるものの、パートナー間でのコミュニケーションの機会をいかに持てるかという視点でもこれだけ差があるのですね…。
生まれる前から、子育てを意識できる、家族というチームを意識できることが日本もできたらな…きっと不安やストレスが消えて、子どもたちの笑顔がもっと増えるんじゃないか… それがCoparentingに着目したきっかけでした。
Coparenting は生まれる前から始まっている
この調査を経て、子育てとは、子どもが生まれてきてから考えることではなく、生まれる前から考え、家族というチームを築き上げていくことで、メンバーが増えた(子どもが生まれた)後も、子ども含めたよりよい関係性が築かれること、それが「Coparenting(コペアレンティング)=一緒に子育てする」、という考え方だということが改めてわかりました。
「Coparenting」がうまくいくことで、パートナーとの関係が良くなる、育児不安や育児ストレスが低下する、という結果が出ていることにも納得です(※1)。
いっしょに育とう。子どもと、笑おう。
GlicoのCo育てPROJECTのCoには、Coparentingに必要な、Communication(コミュニケーション)と
Co-oparation(コオペレーション)の意味も含まれています。和気あいあいと、上手に協力しながら、いっしょに子育てできることを願って、PROJECTは未来に向かって進んでいきたいと思います。
Co育てコミュニケーションアプリ「こぺ」
一緒にCo育てスタート! 妊娠期から使える、初めての子育てするパパとママのコミュニケーションを、こぺポンが間にたってあれこれサポートする、Co育て応援アプリを提供しております。「こぺ」では、夫婦で一緒に使えるメッセンジャーや、育児ログの共有、医師監修のお役立ち記事など子育てパパ・ママに役立つ情報も提供しています。ぜひ一度のぞいてみてくださいね。
(※1)Coparentingが促進されることにより、
・父母の育児ストレスを小さくし、親の自己有能感を向上させる
(Feinberg et al., 2010)
・乳児の心理的・情動的調整は高まる
(Feinberg & Kan, 2008)
(※2)
■調査対象:12歳以下の子供を持つ親 (日本人男性:日本人女性:フィンランド人男性:フィンランド人女性=150:150:150:150)
■調査日:2018年12月25日(火)~28日(金)
■インターネット調査:日本全国・フィンランド
(※3)日本語版コペアレンティング関係性尺度
Japanese version of Coparenting Relationship Scale(CRS-J)
武⽯ 陽⼦, 中村 康⾹, 川尻 舞⾐⼦, 跡上 富美, 吉沢 豊予⼦:⽇本語版コペアレンティング関係尺度
(CRS-J)の信頼性・妥当性の検証, ⽇本⺟性看護学会誌, 17(1), 11-20,2017
(オリジナル版)Feinberg, M. E., Brown, L. D., & Kan, M. L. ︓A Multi-Domain Self-Report Measure
of Coparenting, Parent Sci Pract, 12(1), 1-21, 2012.
- タグ #