スポーツ栄養学の視点から見た、いまだ知られていないアーモンドの魅力とは?

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(プロフィール)
右:管理栄養士・公認スポーツ栄養士 田澤 梓氏
日本バレーボール協会ニュートリションメンバー。中央学院高等学校野球部管理栄養士。大学・専門学校で「スポーツ栄養学」の教鞭をとる。スポーツ栄養コラム・レシピの執筆、食育講演、さまざまな競技のアスリートやスポーツ愛好家に対して栄養・食事のサポートや体づくりのアドバイスを行う。給食委託会社勤務後、スポーツジムや順天堂大学長距離陸上部での食事相談業務、国立スポーツ科学センター非常勤専門職員を経て現職。子育て相談サロン「ままカフェしんゆり」を主宰。

左:桐原沙織氏
NPO法人マドレボニータ 認定産後セルフケアインストラクター。養成スクールを経て、2021年12月よりインストラクターとしての活動を開始。産後女性を対象とした「産後ケア教室」や「産後のバランスボール教室」を埼玉県の大宮、戸田公園で開催している。3児の母。趣味はランニングとアルバムづくり。
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アスリートはもちろん、運動を楽しみ、健やかな体づくりを目指している人に役立つ「スポーツ栄養学」。その専門家がアーモンドのポテンシャルを徹底分析。おにぎり+アーモンド、プロテイン+アーモンドミルクなど、手軽に栄養補給ができるアイデアも紹介します。

プロテインを植物性ミルクで溶くのは正解?

桐原:コロナ禍で外出が減り、緊急事態宣言の発令によって自分の時間が取りにくくなった母親たちのため、先輩インストラクターが「朝活バランスボール部」というオンラインサークルを立ち上げました。田澤さんとはそこで出会ったんですよね。ほぼ毎朝、オンラインで顔を合わせて、一緒にバランスボールで弾んで体を動かしています。

田澤:朝活で交流するうちに、桐原さんが毎朝走っていることや、目指しているお仕事を知り、体づくりや健康についてぜひ詳しくお話ししてみたいと思っていました。

桐原:うれしいです。私はランニングが好きで、朝活バランスボール部で30分弾んだ後、走りに行っています。以前は空腹で走っていたんですけど、走る前に糖質やたんぱく質をとるようにしたら、体重が落ち、体が引き締まってきました。食事や栄養によって、運動の効果が変わることを実感しています。

田澤:そうなんです。どんな栄養をいつ、どうやってとるかによって運動パフォーマンスや体は大きく変わります。それらを研究し、アスリートはもちろん、桐原さんのようなスポーツ好きの人にも役立ててもらうのが、私たち公認スポーツ栄養士の専門分野です。今日は何でも質問してくださいね。

桐原:はい、では「栄養バランスの整え方」について教えてください。私は普段からなるべく多くの食品をとろうとしているのですが、毎食必ず、というのはなかなか難しくて。「昨日は野菜不足だったから、今日はしっかりとろう」とか、1週間単位で考えて調整しています。そんな食べ方でもいいのでしょうか?

田澤:すごくいいと思います。エネルギー源になる栄養素や体をつくるために必要なたんぱく質、水溶性ビタミン類、ミネラルは1日の中で、朝食でとれなかったら、補食、昼食や夕食でバランスをとることで調製すれば大丈夫です。また、脂溶性ビタミンなどは、1週間くらいの期間でバランスがとれていれば大丈夫、と私も実際にアドバイスしています。

桐原:それなら、食事がプレッシャーやストレスにならないのでありがたいです。

田澤:しっかり運動をする人はその分忙しくなるので、食事の準備も大変ですよね。だから、栄養価の高い食材を選ぶとか、主食と主菜が一緒になった丼ものを食べるなどの工夫をするといいですよ。

桐原:運動をする前後には、どんな栄養をとるといいですか?

田澤:運動にはエネルギーが必要なので、エネルギー源となる糖質を含むもの、例えばおにぎりやパン、麺類などを食べてから運動するといいですね。運動後も、運動で消費したエネルギーを補給するために、糖質をとりましょう。もう一つ、大切なのが運動後のたんぱく質です。運動すると、筋肉の細胞が傷ついた状態になります。それを修復するために、細胞をつくる材料となるたんぱく質が必要なのです。運動後、すぐに食事ができるなら肉や魚、豆製品などの主菜をとること。食事まで時間が空いてしまうなら、チーズや牛乳など、手軽にとれる捕食で補うのがおすすめです。

桐原:たんぱく質はかなり意識していて、普段はプロテインパウダーを飲んでいます。夫からすると「趣味で走るだけなのにプロテイン!?」と思うみたいですけれど(笑)。

田澤:プロテインパウダーは素早く簡単にたんぱく質を補給できるので、便利ですよね。運動後24時間は筋肉をつくる働きが高まっている状態です。体が筋肉をつくるためには運動直後だけしっかりたんぱく質をとればOKというわけでなく、筋肉をつくる刺激を与えるために十分なたんぱく質量を、3食以外からも頻繁にとることで、筋肉をつくる働きが高まっている状態を延長できるのです。

桐原:プロテインを飲むとき、豆乳やオーツミルクなど、植物性ミルクに溶かして飲んでいるんです。プロテインと植物性ミルクの組み合わせってどうなんでしょう?

田澤:最近は植物性ミルクも身近になっていますし、いいと思いますよ。大切なのは、たんぱく質を通常の食事よりも頻繁に補給することと、習慣として続けることです。食事で動物性の栄養がきちんと摂取できているなら、補食では植物性の栄養をとるようにすると、栄養バランスがさらによくなります。

桐原:よかった! 私は糖質のとりすぎが気になるので、砂糖不使用の植物性ミルクをよく選ぶんです。そのほうが、牛乳よりも糖質が少ないですから。間食する時は、なるべくアーモンドなどのナッツをとるようにしています。

田澤:間食にナッツ、いいですね。ナッツはビタミンEや良質な脂肪、食物繊維など、さまざまな栄養がつまった栄養価の高い食品です。トレーニングの合間でも手軽に食べられますしね。

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桐原:ナッツ類、大好きです。食事でもナッツをとるには、どうしたらいいですか?

田澤:例えば、スライスナッツをサラダにかけてもいいし、おにぎりに粒々のアーモンドを入れると食感がよくなっておいしいですよ。カップスープを飲むときも、お湯ではなくアーモンドミルクで溶くとビタミンEや食物繊維、良質な脂肪がとれるので、栄養価がぐっと上がります。

桐原:スープにアーモンドミルク、初めて知りました。簡単だし、すぐに取り入れられそうです。アーモンドミルクは料理にも使えますか? 今までクリーム煮やシチューに豆乳を使ったことはあるんですけれど。

田澤:プレーン味や砂糖不使用タイプなら、味わいもなじみやすく、アーモンド特有の風味も楽しめて、料理にも使いやすいですよ。

桐原:運動中や運動後の水分補給のために、そのまま飲むのはどうですか?

田澤:その場合は冷やして飲むといいですよ。5〜15度の水分は腸で速やかに吸収されるので、熱中症対策になります。それに、冷たいものを飲むと体の深部体温が下がるので、運動後に食欲が湧きやすくなります。

アーモンドの栄養と運動の関係に注目!

桐原:ところでアーモンドにはどんな栄養があるんですか?

田澤:特に注目したいのは、「ビタミンE」「不飽和脂肪酸」「食物繊維」の3つです。

ビタミンEは抗酸化作用が高いことが特徴です。運動など非日常的な活動は体にはストレスとなり、それが蓄積していくと細胞膜の損傷、体にダメージを引き起こす酸化ストレスが発生します。さらに、ゴルフやランニングなどアウトドアのスポーツをするときは、紫外線のダメージによって酸化ストレスが多く発生します。酸化ストレスは多過ぎても、少な過ぎても運動パフォーマンスに影響し、多過ぎる酸化ストレスを取り除くには、サプリメントなどで大量にビタミンEなどの抗酸化物質を摂取するのではなく、アーモンドなど食品から摂取するのがおすすめです。

2つ目は、脂肪酸の一種、不飽和脂肪酸です。不飽和脂肪酸の中でもアーモンドに多く含まれるのは、「オレイン酸」と「リノール酸」。不飽和脂肪酸は血中コレステロールを下げる、動脈硬化や血栓を防ぐ、血圧を下げるなど、さまざまな作用を持っています。

桐原:運動という面から見ても、アーモンドは優秀なんですね。食物繊維は、便秘解消にいいというイメージですが、運動する人にも必要なのでしょうか?

田澤:食物繊維をとることには「便秘解消」と「腸内環境の改善」という2つのメリットがあります。特に減量中のアスリートやスポーツ愛好家は、食物繊維が不足してしまうと便秘気味になり、体重が落ちず、代謝も悪くなってしまうので、積極的にとりたい栄養の一つです。でも、食物繊維を多く含む野菜はカサが多くて、たくさんとるのが大変ですよね。アスリートはエネルギーやたんぱく質の補給が最優先なので、野菜は後回しにしがち。そういうときに、アーモンドのように食物繊維が豊富なものをとるといいんです。

腸内環境の改善については、面白い研究データがあります。運動パフォーマンスの高いアスリートと一般人の腸内環境を比べたところ、アスリートの腸には多種多様な腸内細菌が棲んでいて、有用な物質を作り出す能力が高いということがわかりました。つまり、腸内細菌の餌となる食物繊維をしっかり摂り、腸内環境がよくなれば、運動パフォーマンスがよくなるかもしれないのです。

桐原:すごく勉強になりました。運動にはたんぱく質が必要ということは知っていましたが、ビタミンEや食物繊維も有効だとは知りませんでした。

田澤:ナッツは手軽に食べられるし、アスリートやスポーツ愛好家にうれしい栄養が凝縮されています。アーモンドミルクなら運動中や運動後に、手軽に水分や栄養を摂れますよね。ナッツやアーモンドミルクを含め、なるべく多種多様な食品を摂って体調を整えて、これからも運動を思い切り楽しんでくださいね。