キーパーソン、お二人に聞いた!乳児用液体ミルク開発の舞台裏!
●プロフィール紹介
水越 由利子さん(みずこし ゆりこ)さん
マーケティング担当
永富 宏(ながとみ ひろし)さん
商品開発担当
江崎グリコでは、消費者庁より特別用途食品の表示許可を受け、乳児用調製液状乳(以下、乳児用液体ミルク)「アイクレオ赤ちゃんミルク」を、2019年3月11日(月)から全国で順次販売開始しました。⽇本初の乳児⽤液体ミルクとなる本商品は、乳児用調製粉乳(以下、粉ミルク)と同様の成分でできた、新生児から飲ませることができる液体状のミルクです。無菌パックに充填され、常温での保存が可能!消毒した哺乳瓶に入れ替えれば、温めることなく赤ちゃんに飲ませることができます。また、調乳済みの状態でパッケージされているので、お湯や水に溶かしたり、 薄めたりする必要もないのも大きな特徴です。
今回は、そんな「アイクレオ赤ちゃんミルク」の開発に初期段階から参加されているキーパーソンである、水越 由利子さんと、永富 宏さんお二人に、開発の舞台裏をたっぷり語っていただきました。
■自身の震災での経験などから乳児用液体ミルクの開発に着手
ーーー まずはじめに、⽇本初の乳児⽤液体ミルクである「アイクレオ赤ちゃんミルク」は、どんな商品なのかについて教えてください。
水越さん:基本的に、成分は粉ミルクと同様のものです。ただし、粉ミルクと違って調乳済みの状態で販売されているのが大きな違いです。そのためお湯や⽔に溶かすことなく、消毒済みの哺乳瓶に移し替えれば、そのまま⾚ちゃんに安心して与えられます。さらに、常温保存(賞味期限6カ月間)ができ、外出時の持ち歩きや長期備蓄用としても非常に便利な商品です。
永富さん:そもそも日本国内で、乳児用液体ミルクが注目されはじめたのは、2016 年4 ⽉に起こった熊本地震がきっかけです。震災時には、ガスや水といったインフラの断絶、物資も極端に不足し、赤ちゃんに授乳したくてもなかなか環境が整わないという事態が発生しました。そこで注目されたのがフィンランドから⽀援物資として贈られた乳児用液体ミルクでした。それ以来、日本国内でも乳児用液体ミルクの法令改正と商品化への気運が大きく高まったわけです。私も、この震災をきっかけに災害大国の日本で、災害弱者である赤ちゃんに「何かできることはないか?」と真剣に考え始めました。
■乳児用液体ミルクの必要性には強い確信を持つことができた
ーーー ⽇本初の乳児⽤液体ミルクを開発にするにあたり、不安などなかったのでしょうか?
水越さん:乳児用液体ミルクが絶対にお客様に必要とされるという確信があったので、不思議と不安はありませんでした。ただ、法令改正の行方もまだ判然としない中でしたので、開発がうまくいっても商品を発売するのに多少時間はかかってしまうかもしれない、とは思っていました。しかし、私自身も、2011年の東日本大震災のときには、1歳の子供を抱えており、小さい子供のいる家庭での震災の辛さを経験し、その経験を元に同様の悩みを抱えるママたちに、国産の乳児用液体ミルクをお届けしたいという強い想いは揺らぐことはありませんでした。苦労とは思いませんでしたが、今にして思えば商品発売に至るまで厚生労働省まで何回足を運んだかわかりませんね(笑)
永富さん:災害時には、乳児用液体ミルクの必要性について社会も高まりを見せるのですが、また時間が経過するにつれ社会の関心が薄れていくといった歯がゆい時期はありました。我々としては、国産の乳児用液体ミルクの必要性に確信を持っていましたので、強い信念を持って開発に邁進することがきました。もちろん、乳児用液体ミルクを商品として許可していただけるよう、データとその根拠を幾度となく繰り返し示していく作業も、商品開発と同時に綿密に行いました。
水越さん:乳児用液体ミルクの開発を開始するにあたり、実際に国内での家庭訪問調査を行ったのですが、皆さんから乳児用液体ミルクについて好意的な反応をいただけたことが、大きな自信 につながりました 。さらに、昨年の夏に、子育て支援と男女共同参画において先進的な北欧のフィンランドとスウェーデンにも足を運んだのですが、特にフィンランドでは、妊娠期から子どもが小学校に入るまでの間、定期的に助産師さん・保健師さんからアドバイスをもらえる「ネウボラ」という制度やパパが積極的に育児に取り組む環境が確立されており、共働きするうえでも乳児用液体ミルクは、非常に大きな貢献を果たしていると現地でお聞きし、女性の社会進出が進む日本においても、今後ますます乳児用液体ミルクの必要性や需要が高まるであろうと、さらに確信を深めることができました。
■日本のママが安心して授乳できる美味しさと白さを実現!
ーーー 乳児⽤液体ミルク「アイクレオ赤ちゃんミルク」を開発されるにあたり一番苦労した点について教えてください。
水越さん:今回の商品開発において、永富さんに特に苦心していただいた大きなポイントが「味」と「色の白さ」だと思っています。まず、企業理念「おいしさと健康」をかかげるGlicoとしては、「おいしさ」は無くてはならない重要な要素であり、大前提としてはずせません。「アイクレオ赤ちゃんミルク」は、圧倒的な「おいしさ」を実現できたと自負しています。また、色についてですが、日本のママたちにとって、違和感を感じさせない「ミルクの白さ」にこだわりました。
永富さん:日本国内で発売する乳児用液体ミルクとして、白さが重要だと思っていました。しかし、開発段階では、「保存期間の長さ(賞味期限の長さ)」と「ミルクの白さ、おいしさ」は常にせめぎ合っており、安心・安全に細心の注意を払いながら、最後まで「白さとおいしさ」にはこだわってきました。液体ミルクの性質上、どうしても保存期間が長くなると色味が変わる傾向にあるので、商品開発において非常に難しいところでした。
水越さん:また、パッケージにもこだわっており、6層構造のバリア性の高い紙パックに、乳児用液体ミルクを無菌充填する無菌パック製法により、乳児用液体ミルクでありながら長期間の保存が可能になりました。さらに、ボトルや缶などのパッケージに比べて、軽くて持ち運びやすく、廃棄しやすいのも特長です。「アイクレオ赤ちゃんミルク」は、我々の今できることのすべてを投入した商品に仕上げることができたと自負しています。
■乳児用液体ミルクの日常的な活用シーンなどを分かりやすく紹介
ーーー 最後に、日本国内での乳児用液体ミルクの認知や活用シーン、今後の展開などについてメッセージをお願いします。
水越さん:発売から約3カ月が経過し、災害備蓄用としての乳児用液体ミルクの役割について多くの皆様に知っていただけるようになり、ご家庭でもストックしていただいているというお話しをお聞きするようになりましたが、災害時に、いざ乳児用液体ミルクを使って授乳しようとしても、普段飲み慣れないものを赤ちゃんに喜んで飲んでもらえるかはやや心配なところです。そこで、我々としては、普段から不測の事態に備えていただき、乳児用液体ミルクを日常的にもご利用いただけるようにお伝えしていきたいと考えています。乳児用液体ミルクを使えば、ママだけでなく、パパ、おじいちゃん、おばあちゃんも育児により参加しやすくなります。さまざまな活用シーンを幅広い層のお客様に対してわかりやすく情報発信していきたいですね。
永富さん:まだまだ、国内では馴染みの薄い乳児用液体ミルクの安心・安全の認知拡大に向けて積極的に取り組んでまいります!また、日本のママたちのお悩みを少しでも和らげるべく、「アイクレオ赤ちゃんミルク」のさらなる改良を続けていきたいですね。ここでは残念ながら申し上げられませんが、もちろん現在もそのためのいろいろな準備を着々と整えていますよ。(笑)おそらく、商品の改良には、乳児用液体ミルクを1から作り上げた今回の開発業務と同等以上の長い時間と情熱が必要となることでしょう。今後の乳児用液体ミルクの進化にも、ぜひともご期待ください!