「働くパパ・ママ+こどもの睡眠と健康」<後編>

OECDの調査(2018年)によると、日本人の睡眠時間は加盟国中ワースト1位。また、子育て世代の働く女性の睡眠時間は短いといわれています。そこで、日経DUALでは睡眠に関するオンラインセミナーを開催。第1部では米国スタンフォード大学 医学部精神科教授の西野精治さんをお招きして、睡眠の役割や睡眠不足が引き起こすリスクを伺うとともに、睡眠に悩む方の対処法も解説していただきました。また、第2部では子どもの睡眠スペシャリストで熊本大学名誉教授の三池輝久さんに、乳幼児の睡眠と生活リズムの重要性について教えていただきます。
※本記事は2021年9月24日に『日経DUAL』で広告掲載されたものです。

【第2部】子どもの心身発達を支える生物リズム

――第2部では熊本大学名誉教授の三池輝久さん(以下同)と、子育て世代代表ということで、「日経XWOMAN」アンバサダーで日本おひるねアート協会 代表理事の青木水理さんにお越しいただきました。まずは、三池先生に乳幼児の睡眠についてお伺いしていきたいと思います。

熊本大学名誉教授 三池輝久先生

三池さん(以下、三池) 最初にお話ししたいのは、人はみな生まれた時からリズムで生きているということ。何のリズムかというと、自律神経や脳機能の保持、ホルモンの分泌などあらゆる生命維持機能に関わる体内時計(概日リズム、生物時計ともいう)です。体内時計は37兆個の人間の細胞の働きをコントロールしているといわれており、その形成は胎児の頃から始まっています。各臓器は時計を持っていて、それぞれ母親の影響を受けながらバラバラのリズムを刻んでいます。生後、脳の視床下部にある視交叉上核という領域によって、バラバラの時計が統合されて体内時計が作られていきます。この時、なるべく早い段階で適切な体内時計が作られると、将来共に心身の健康が保てるというわけです。

――いつぐらいまでに適切な体内時計が作られるといいのでしょうか?

三池 生後1年半から2年ぐらいまでが望ましいのですが、柔軟性があるので小学校に上がる前ぐらいまでに修正できるといいですね。ただ、厳しい言い方になりますが、遅くなればなるほど固定して修正が難しくなるので、なるべく早い時期にいいリズムを作るのがよいですね。

妊婦の体内時計が胎児に与える影響

――妊婦の体内時計が胎児に与える影響はありますか?

三池 これも厳しい話になりますが、妊娠中のお母さんが不規則な暮らし方をしていると、その状態が胎児の遺伝子にプログラミングされて、成人してから高血圧やインスリン耐性異常、精神行動異常といった問題が起きやすくなるという話があります。これはDOHaD(ドーハッド)という有名な医学の仮説で、いまは学説としておそらく間違いないだろうと認識されています。私が見てきた中にも、お母さんの生活リズムが不規則で、新生児期に「なかなか寝付かない」「不機嫌で泣いてばかりいる」といった問題が起きるケースがありました。できる限り、妊娠中のお母さんは一定の時間に食事を取るようにすると、赤ちゃんの適切な体内時計づくりのためにもよろしいかと思います。

――では、乳幼児期の子どもに適切な睡眠時間はありますか?

三池 その時期のお子さんには10時間前後の睡眠が必要といわれています。保育園、幼稚園、そしてその先にずっと続く学校生活にあわせ朝ごはんを食べることを考えると、毎朝6時~7時に起床し、20時~21時までに寝るようにするとよいでしょう。朝8時以降の起床習慣と平日22時以降の入眠習慣は、ASD(自閉スペクトラム症、アスペルガー症候群)発症リスクが高いというデータもあります。

我が子の体内時計チェック法

X WOMANアンバサダー 日本おひるねアート協会代表理事 青木水理さん

青木 睡眠の長さだけでなく、リズムが大切ということがよく分かりました。我が子の体内時計チェック法はありますか?

三池 睡眠表というグラフを作り、2週間ほどお子さんが寝た時間帯を塗りつぶしてみてください。その期間は、無理に起こしたりせず、どういう寝方をしているかを見てください。そうすると、リズムのズレが一目で分かるようになります。今、ほとんどのお子さんが夜更かし型で、それはやむにやまれぬ事情もあったりしますが、できればご家族で週に1度でも早く眠る日を作れるとよいのかなと思います。また、平日も休日も起床時間を変えないことが重要です。睡眠不足になるよりはましですが、体内時計が狂うので寝だめもおすすめしません。

青木 子どもがまだ小さい時、夜泣くとおっぱいをあげながら添い寝をしていたのですが、それは問題ないですか?

三池 新生児はレム睡眠、ノンレム睡眠の周期が60分で、3~4時間置きに目が覚めますが、生後2カ月ぐらいで5~6時間はまとまって眠れるようになり、徐々に夜寝る力がついてきます。以前、私の患者さんで夜間の授乳が習慣づいて乳児が睡眠障害になってしまうケースがあったので、その時は夜間の授乳だけ停止していただくよう提案しました。持続性のある良い睡眠中にお子さんの脳は作られます。逆に断片的な睡眠だと脳機能のバランスが崩れ、発達障害になるリスクがあります。栄養面において夜間授乳の必要がなくなったら心が痛むかもしれませんが、夜間は授乳せずに泣かせっぱなしでよいと思います。セルフスージングといいますが、子どもが自分で自分をなだめて再入眠にする力をつけさせることです。

青木 集合住宅ですと、周囲のご迷惑になるのでは? という問題もあります。

三池 確かにそれもありますね。早い子ですと、3、4日で寝るようになるのですが、長くかかる子もいます。そういう場合は、少しずつ授乳と授乳の間隔をあけてみてください。

青木 うちには3人子どもがいますが、真ん中の子の寝かしつけを上の子にお願いした時はよく寝ていました。おっぱいがないので自発的に寝ていたのかもですが。もしかすると、寝かしつけはママ以外の誰かが担当するのも手かもしれませんね。

三池 お父さんにお願いすると結構うまくいくことがありますよ。

青木 では、夜間授乳ではなく、お水を飲ませるのはいかがでしょう?

三池 胃の中に何かを入れることで覚醒反応が起きるので、よくないみたいですね。ただ、脱水症状も考えられますので、そこは臨機応変に対応していただければと思います。日本のお母さんは一生懸命授乳をしようとされるのですが、適切な知識を持っていただいて、手を抜くところは手を抜いていただき、パートナーにお願いできる部分はバトンタッチしていいと思います。

江崎グリコが考える睡眠と健康

江崎グリコ 執行役員 健康事業マーケティング部長 木村 幸生 氏

江崎グリコが2020年に20代から60代の男女300人に調査を行ったところ、コロナ禍ということもあってか約80%の方が睡眠に悩みを抱え、60%以上の方が睡眠の質に悩んでいることが分かりました。そこでおすすめしたいのが、質の高い睡眠をサポートするさまざまなソリューションです。「パワープロダクションエキストラアミノアシッドテアニン」は、睡眠の質を向上する機能が報告されているL-テアニン配合の機能性表示食品です。「メンタルバランス🄬チョコレートGABAフォースリープ<まろやかミルク>」には、γ(ガンマ)-アミノ酪酸が含まれ、γ-アミノ酪酸には、睡眠の質(眠りの深さ、すっきりとした目覚め)の改善に役立つ機能があることが報告されています。また、子育てアプリ「こぺ」というサービスも提供しております。ここには、お子さんの睡眠を記録できる機能や同志社大学赤ちゃん学研究センター監修の乳幼児の睡眠に関する記事も掲載されております。ぜひ、ご活用ください。

届出表示:本品にはγ-アミノ酪酸が含まれます。γ-アミノ酪酸には、睡眠の質(眠りの深さ、すっきりとした目覚め)の改善に役立つ機能があることが報告されています。
●本品は、事業者の責任において特定の保健の目的が期待できる旨を表示するものとして、消費者庁長官に届出されたものです。ただし、特定保健用食品と異なり、消費者庁長官による個別審査を受けたものではありません。●本品は、疾病の診断、治療、予防を目的としたものではありません。●食生活は、主食、主菜、副菜を基本に、食事のバランスを。

取材・文/山脇 麻生