おつまみスナック開発者を酔わせて、ホンネを聞き出してみた!
お酒を飲む人ならば、一度はお世話になった事があるだろう、チーザやクラッツなどのおつまみスナックの数々。ちょっと濃い目の味がたまらなく、お酒がどんどん進みます。
では、実際にこの味を開発している方はどんな方なのでしょうか?
今回はおつまみスナック開発担当者に居酒屋でビールを飲みながら開発秘話や苦労、仕事への想いなどをぶっちゃけ本音でインタビューしてみました。
最強と言われるGlicoのおつまみスナックでも、適わない相手がいる!?
取材させていただくのは、クラッツ、かるじゃが、チーザ新製品開発担当の辻内誠也さん
…と、お名前はうかがっていたのですが、年齢もどんな方なのかもまったく情報がありません。毒舌で厳しい方だったら、とりあえず酔わせてしまえ!などと半ばビビりながら居酒屋で待ち受けていると、辻内氏が登場。
まずはビールで乾杯。お仕事お疲れさまです!
記者:居酒屋へ行くときも、おつまみのメニュー選びとかこだわるのですか?
辻内氏:お店のおススメを頼みます。気になる味や新しい味に出会うとこれは何だろう…とばらしてみたり、昔から食に興味があって食べる事が大好きで、美味しいものを食べた後は家で味の再現をしたりもしていましたよ。
記者:では、他社さんのお菓子とか、海外のお菓子とかも再現できるのですか?
辻内氏:だいたいわかります。これは○○パウダーと、○○エキスと、○○調味料だな、みたいな。海外のお菓子も分かりますが、そんなに参考にする訳では…あんまり美味しくないですよね?やはり日本のお菓子のレベルってとても高い。
記者:では、これは負けた!と思うようなおつまみスナックってありますか?
辻内氏:うーん、おつまみスナック市場自体、Glicoが開発したものですからね。正直、無いかな(笑)。でもスルメとかナッツとか、昔からの定番モノには、なかなか適わないです。例えば、スルメを食べたい人がスルメ味のスナックを買うかっていうと、疑問ですよね。頭に刷り込まれている定番の味に勝つのは、難しいです。
記者:なんだかちょっと固い話になってきましたね。もっと飲んでください(笑)。
コンビニやスーパーで見つめられる怪しい視線…。それは開発担当者かも!?
記者:やっぱりコンビニとかスーパーなどで自分の開発した商品が売れているかどうかチェックしますか?
辻内氏:そりゃぁ、しますね。でも、ずーっと見てると怪しいし、チラチラ見るカンジで。
記者:(商品を)カゴに入れたら「よっしゃー!」ってなりますか?
辻内氏:なります。一番うれしいシチュエーションは、ビールを手に取って、そのままおつまみスナックコーナーに行って、迷わず(自分が開発した)商品をカゴに入れてお会計。でもね、コレ、見たことないんです(笑)。いろんな商品を手に取って、悩んで悩んだ末に買うというシーンは見たことあるんですけどね。
記者:購入者からの生の声って聴くことはあるのでしょうか?
辻内氏:もちろん、会社が調査を行っているので情報が入ってきます。個人的には家族や友人にも聞きますし、特にママ友の意見とかは参考になります。お客様が直接アクセスできるお客様センターもありますが、美味しかったとしても電話をしてくださる方はそう多くないですね。美味しかったよ、って聞くとすごくうれしいからもっと言ってほしいです。
記者:ハイ、これから美味しかったらお客様センターに電話します(笑)。
辻内氏:そうしてください(笑)。ものすごく励みになります。
開発で苦労したからといっても、売れるとは限らない… ヒット商品をつくる苦悩
記者:それでは、そろそろお酒もまわってきたと思いますので、ホンネを聞きたいと思います。ズバリ、これはもっと売れてほしいという商品はありますか?
辻内氏:生チーズのチーザ。思ったよりも、という事ですよ。もっと爆発的に売れてほしい!だって、ものすごく苦労したんですよ!生チーズを入れるってことがどれだけ大変か…。
試作に試作を重ね、やっとできた商品なんです。
記者:試作は何回ぐらいされるのですか?
辻内氏:商品によりますね。少ない時は、4~5回ぐらいで決まる事もあるし、多い時は100回を超えます。ちょうど今、試作している商品は70回目。でも決まらない。それどころか、違う開発チームが今130回目って聞いて。まだまだこだわれるかな、と思っています(笑)。
僕たちにはたっぷり時間があるわけではなく、期限を決めて開発をしていますから、とにかく時間に追われながら商品開発しています。
新フレーバーは味が変わるだけじゃない! 食感ものどごしも全てをリニューアル
辻内氏:例えばコレ(クラッツの新商品・アンチョビガーリック味を取り出し)は、ビシッと決まりましたよ。
※アンチョビガーリック味は期間限定品のため、2017年春に販売終了しております。
記者:すぐに皆さんの意見が一致したのですか?
辻内氏:いや~、ガーリック味が強すぎるとか、アンチョビの匂いがキツイとか言われましたけど、そこは押し通しました(笑)。アンチョビガーリック味の時点でパンチが効いてないと、物足りないですよね?ガーリック好きな人に買ってもらいたいですし、クセはある程度残さないと。
記者:(だんだん、饒舌になってきました。質問しなくても話し続ける…)
辻内氏:クラッツの新フレーバーって、プレッツェル部分はそのままで、上にかかっている粉というか味だけ変わっていると思っていません?ちがうんですよ!!プレッツェル部分の味や食感も変化させているんです!(おもむろにクラッツのペッパーベーコン味を取り出し)これと食べ比べてみてください!
(※撮影のため特別に許可をいただいています)
記者&スタッフ一同:…ちがう!! 食感や固さが全然違う!
辻内氏:(ちょっとドヤ顔で)でしょ?いろいろ試行錯誤しているんです。
ポッキーやプリッツに負けない新定番を誕生させる、それに向かって…
記者:では、開発を担当していて、一番の苦悩は?
辻内氏:一番の苦悩は○○○(辻内氏の会社生命にかかわるので掲載を遠慮します)です。
記者:おぉー。さすが酒の席ですね~。
辻内氏:じゃぁ、2番目で(笑)。正解がないことですかね。味って、千差万別で誰もが同じ基準じゃない。そこにあえて挑んでいくことが、難しいです。世の中にはどんどん新しい味のスナックが発売されるけれど、やはり定番の味が一番売れているって事が多いんです。この定番に勝つ新たな定番の味をつくりたい。けれど、なかなかうまくいかないですね…本当は大正解があるのに、小さい正解で満足してしまうことがあったり…正解がないから自分を信じる強さが必要ですね。(その後も苦悩の話は延々と続く…。)
記者: これからの目標というか、目指すものって何ですか?
辻内氏:新定番をつくる、それが最大の目標です。ポッキーやプリッツのように、誰もが知っていて、その味を思い出せるような定番。新しい味のジャンルを切り開いていかなくては。今は○○味(企業秘密)に取り組んでいますし、注目しているのは○○(企業秘密)です。実現できるかどうかは別として、1日に1ネタ新しい味を書き留めていて、結構な数になっているんですよ。どんどんチャレンジしていきたいですね。
酔ってもそんなに態度が変わらないと言っておられましたが、杯を重ねるほど、開発に対する熱い気持ちを語ってくれた辻内氏。
美味しいおつまみスナックの裏側には、こんなにも苦悩や努力がつまっているんだ、と実感しました。
辻内氏がどんどん新定番を生み出すことに期待して、みなさんビールとクラッツで乾杯です!
-
釣りと料理とスポーツ観戦が趣味のディレクター&ライター
大内夏実