赤いパプリカの抗酸化成分『パプリカキサントフィル』を活用しよう

酸素の力で呼吸持久力を高めよう

健康維持に重要な緑黄色野菜、特にハードなトレーニングを行うアスリートは摂取を心掛けたい食品です。緑黄色野菜の機能成分と効果を説明するとともに、優れた緑黄色野菜である赤いパプリカの魅力を紹介します。

緑黄色野菜の摂取状況

厚生労働省が定める成人1日あたりの緑黄色野菜の摂取目標は120g。しかし、実際には日本人の緑黄色野菜の摂取量は減少傾向にあり、目標とする120gとの乖離が大きくなっています(図1)。2013年度の緑黄色野菜の摂取量の平均は83.6g(平成25年国民健康・栄養調査)まで低下し、目標の7割にも満たない状態となっています。年齢別に見ると、特に20~29歳の層では、摂取目標の半分程度となっています(図2)。

図1 緑黄色野菜摂取量の年次推移(1人1日あたり)
図1 緑黄色野菜摂取量の年次推移(1人1日あたり)
■出典)平成25年国民健康・栄養調査報告のデータを加工
図2 緑黄色野菜の摂取状況(2013年・年代別)
図2 緑黄色野菜の摂取状況(2013年・年代別)
■出典)平成25年国民健康・栄養調査報告のデータを加工

緑黄色野菜と淡色野菜の違いは?

健康維持に重要なのに、なかなか摂取できていない緑黄色野菜。その有効成分は何でしょうか?「緑黄色野菜にあって、淡色野菜にないもの?」それは図3からわかるように、カロテノイドと呼ばれる成分です。カロテノイドは、コーンの黄色、ニンジンのオレンジ色、トマトやパプリカの赤色、を作り出している天然の色素成分です。このように、カロテノイドは私たちの食事に彩をもたらす重要な成分ですが、その機能は、色素としての機能に留まりません。実は、カロテノイドの最も重要な機能は、活性酸素を消去する能力(抗酸化力)です。植物は光合成を行いエネルギーを得ていますが、この際多量の活性酸素が発生します。そこで植物はカロテノイドを合成して葉緑体に蓄積し、活性酸素から自分の細胞を守っています。一方私たちは、ミトコンドリアが酸素を利用してエネルギーを産生していますが、この際活性酸素が発生します。私たちもカロテノイドの抗酸化力を活用したいですが、ヒトはカロテノイドを体内で作ることが出来ません。このため私たちは緑黄色野菜を摂取し、カロテノイドを取り入れなくてはなりません。特に限界に挑戦するアスリートは、大量の酸素を取り組み、多くのエネルギーを作り出す必要があり、緑黄色野菜の摂取が非常に重要です。

図3 野菜に含まれる主要カロテノイドの含有量
図3 野菜に含まれる主要カロテノイドの含有量
■出典)Aizawa K, et al., Food Sci. Technol. Res., 13, 247 – 252 (2007)のデータを加工
引用文献中に記載のα-カロテン、β-カロテン、リコピン、カプサンチン、ルテイン、ゼアキサンチン、β-クリプトキサンチンの合計をカロテノイドとした。

赤血球に分布しやすいキサントフィル

カロテノイドは大きくカロテン類とキサントフィル類に分類することができます(表1)。カロテン類は種類が少なく、αカロテン、βカロテン、リコピンの3種が代表的です。カロテンは炭素と水素だけでできた疎水性(油溶性)の物質です。一方キサントフィルは、αカロテンやβカロテンの両末端に酸素原子が導入され物質で、700種類以上の存在が報告されています。キサントフィルは分子内に親水性部分と疎水性部分を有する両親媒性物質、疎水性のカロテンよりも細胞膜との親和性が高く、吸収された後の体内分布が異なります。
私たちが緑黄色野菜として摂取したカロテノイドは、小腸で吸収されたのち、血液中に移行しますが、血漿には主にカロテン類が、赤血球には主にキサントフィル類が分布します。アスリートのパフォーマンスに必須な酸素を全身に届ける赤血球は、カロテンではなくキサントフィルを必要としているのです。赤血球は酸素の運搬・脱着を繰り返し、活性酸素の障害を受けやすいと考えられます。赤血球をまもるためにも、アスリートはキサントフィルの摂取が重要です。

表1 緑黄色野菜のカロテノイド
分類 具体例 構造 特徴
カロテン α-カロテン、β-カロテン
リコピン
炭素と水素のみで構成 ・疎水性
・抗酸化力あり
・主として血漿に分布
キサントフィル ルテイン、ゼアキサンチン、β-クリプトキサンチン、
カプサンチン、カプソルビン、
ククルビタキサンチンA、など700種類以上。
炭素、水素、酸素で構成 ・両親媒性
・主として赤血球に分布
・βカロテンの10~30倍の非常に強い抗酸化力を示す。

赤いパプリカはキサントフィルの宝庫

摂取を心がけたいキサントフィルですが、ではどんな緑黄色野菜を摂るのがよいのでしょうか?野菜は通常カロテンとキサントフィルを両方含んでいますが、その組成は植物ごとに大きく異なります。様々な緑黄色野菜のカロテンとキサントフィルの含有量を図4に示しました。まず目に付くのは、緑黄色野菜の代表、トマトとニンジンです。カロテンの含有量では、トマトが1位(主成分はリコピン)、ニンジンが2位(主成分はβカロテンとαカロテン)となりますが、どちらもキサントフィルをほとんど含みません。逆に、キサントフィル量が多く、カロテンをあまり含まないのが赤いパプリカです。パプリカの鮮やかな赤色は、まさにキサントフィルが濃く濃縮されている証拠です。赤いパプリカに続くのは、コマツナ、チンゲンサイ、ホウレンソウなどの緑色の葉物野菜です。緑色の葉物野菜には、ルテインと呼ばれるキサントフィルが豊富に含まれています。
図4の結果からわかるように、カロテン類は広く緑黄色野菜から摂取が可能です。しかし、赤血球が必要とするキサントフィルは、摂取する野菜の種類により大きな違いが生じます。したがって、図4の結果を意識して、緑黄色野菜の摂取を考えることは、アスリートにとって重要な食事コントロールとなる可能性があります。葉物野菜はキサントフィルを摂取するための中心的野菜で、ルテインの摂取に非常に有効です。しかし、キサントフィルを摂取するために最もおすすめの野菜は、赤いパプリカです。図5にスペイン産の赤いパプリカから抽出した、パプリカキサントフィル製剤の分析結果を示します。赤いパプリカには、何と7種類ものキサントフィルが含まれていることがわかります。このうち、カプサンチン、カプソルビン、クリプトカプシン、カプサンチンエポキシドの4種は、赤いパプリカ類からしか摂取できないキサントフィルです。赤いパプリカは、その他の緑黄色野菜とは全く異なるキサントフィルを多量に含んでいるのです。

図4 各種緑黄色野菜のカロテノイド組成
図4 各種緑黄色野菜のカロテノイド組成
■出典)Aizawa K, et al., Food Sci. Technol. Res., 13, 247 – 252 (2007)のデータを加工。
引用文献中に記載のα-カロテン、β-カロテン、リコピンの合計をカロテン類、カプサンチン、ルテイン、ゼアキサンチン、β-クリプトキサンチンの合計をキサントフィル類とした。
図5 スペイン産赤いパプリカ由来のパプリカキサントフィル製剤のカロテノイド組成
図5 スペイン産赤いパプリカ由来のパプリカキサントフィル製剤のカロテノイド組成

パプリカキサントフィルのすごい抗酸化力

赤いパプリカの魅力は、キサントフィルの種類だけではありません。パプリカに含まれるキサントフィルは、カロテノイドの中でも非常に高い抗酸化力を示すことが最近報告されました。図5は、様々なカロテノイドの活性酸素消去活性を比較したものです。赤いパプリカに特徴的に含まれるキサントフィルである、カプソルビン、ククルビタキサンチンA、カプサンチン、はアスタキサンチンを上回る抗酸化力を有していることが解りました。アスリートがとりたい緑黄色野菜は、豊富なキサントフィルが特長の、赤いパプリカで決まりです。
最近、パプリカキサントフィルを毎日摂取すると、アスリートにどんな効果があるのかが報告されました。関心のある方は、Power Production Magazine 「呼吸持久力を高めるパプリカキサントフィル」をご参照ください。

図6 キサントフィル類の抗酸化力比較(一重項酸素消去活性)
図6 キサントフィル類の抗酸化力比較(一重項酸素消去活性)
■出典)Nishino A, et al., J. Oleo Sci., 64, 1135-1142 (2015) のデータを加工

まとめ

  • 緑黄色野菜はカロテノイドの重要な供給源。しかし、日本人(特に若年層)の緑黄色野菜摂取量は、厚生省が目標とする水準(1日120g)を大きく下回っています。
  • カロテノイドはカロテンとキサントフィルに分類されますが、キサントフィルは、カロテンよりも赤血球に分布しやすく、かつ抗酸化力が高いという特徴を有しています。
  • キサントフィを豊富に含む緑黄色野菜としては、葉物野菜と赤いパプリカが挙げられます。アスリートには、高い抗酸化力が特長の赤いパプリカ、もしくはパプリカキサントフィルを含むサプリメントの摂取をお勧めします。

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