身体と心の健康に必要な、正しい休息のススメ
良質な睡眠は「小さな幸せ」。日々の暮らしで、幸せな休息を実現する秘訣とは
– スリープアドバイザー/眠りの研究家 米田 創さん
北海道札幌市の北部、閑静で明るい雰囲気の住宅街にある寝具店「ふとんのヨネタ」。正式な社名に「小さな幸せを創る有限会社」と付けられている通り、快適な眠りの提供を通じて地域の皆さんの小さな幸せづくりをサポートしています。
店長を務める米田 創さんは、日本睡眠科学研究所認定スリープアドバイザー兼ピローアドバイザー・日本睡眠環境学会会員でもある「眠りの研究家」。今回は米田さんに、日々の休息=眠りの質を高めること全般についてうかがいました。
良質な睡眠のために、各世代別に意識したいのはどんなこと?
──「良い休息=良質な睡眠のとり方」とひと口で言っても、世代が変わると意識する点も変化すると思います。各世代において、特にどんな点に留意すると良いのでしょうか?
米田さん(以下米田):まずは世代を問わず、睡眠時間の長さについては「1日7時間程度」がベストと考えています。これが6時間以下ぐらいまで短くなると、日中の体調にも影響があると感じる方が多いのではないでしょうか。
しかし、良い眠りのためには睡眠時間だけでなく、眠りの質も大切です。睡眠の質を高めるポイントは、このあと各世代別にお話ししましょう。
──ありがとうございます。スポーツや勉強に取り組む10代の学生世代はどんな点を意識すると良いでしょう。
米田:もし、勉強もスポーツも「寝る時間を削って頑張る」という方がいらっしゃるなら、やはり睡眠時間はしっかり確保していただいたほうが良いですね。適切に睡眠をとることで、体力はもちろんですが記憶力にも良い影響があります。覚えるべきことを確実に身につけるためにも、「夜はきちんと眠り、起きている時間の中でしっかり頑張る」ことをおすすめします。
──仕事や家事、育児や介護などで丸一日活動している20代~40代ぐらいの現役世代はどうですか?
米田:当店に眠りの相談に来られるお客様にも、現役世代の方が多いと感じます。特によくうかがうのは、「肩や首の凝りがひどく、ぐっすり眠れない」というお悩みですね。デスクワーク中心のお仕事をされている方が、特にこの問題を抱えてご相談にいらっしゃるという印象です。
実は、日常生活での姿勢が良くないと睡眠時の姿勢にも影響します。上半身の筋肉を意識的に伸ばすなどの適度なストレッチをしつつ、日ごろから良い姿勢で過ごすよう心掛けることで、眠りの質も高められます。現役世代の睡眠品質向上のポイントは「良い姿勢と適度な運動」ですね。
──では、睡眠のサイクルに変化を感じ始める中高年世代はどんな点を意識すると良いですか?
米田:中高年の方ですと、現役世代の頃より睡眠時間が少し減ったと感じるのも自然なことかと思います。「午前4時、5時など早朝に目が覚めてしまう」と相談される方も多いのですが、その分早い時間に寝ているなどトータルで睡眠時間を確保できていればあまり気にしなくても良いでしょう。
眠る前にお酒を飲む方もいらっしゃるかと思いますが、飲みすぎると眠りを浅くしてしまいます。また、トイレに起きる回数が増える可能性もあるため、就寝前のアルコールはほどほどの量にとどめましょう。
──各世代で、寝具を選ぶときの秘訣はありますか?
米田:こちらも全世代に共通するお話になりますが、特に「枕」と「敷布団」が大切と考えています。これら2つは眠っているときの頭と身体を支えているものですから、ご自身に適したものを選ぶことで眠りの質も良くすることができます。
──なるほど、世代を問わず「頭と体を支える寝具」が大事とのことですね。
日常生活のなかでできる、睡眠品質向上法とは?
──起きている時間の生活習慣が、睡眠に与える影響もあるかと思います。眠っていないとき、睡眠の質を高めるために何を心がけたら良いでしょうか?
米田:朝、起床時に行いたいのは「起きたらまずカーテンを開けること」ですね。決まった時間に太陽の光を浴びることで、日中しっかり活動して夜は自然に眠るためのスイッチが入るといわれています。また、夜眠る前には「必ず部屋着からパジャマに着替えて歯を磨く」などのルーティン的な行動を毎日実行すると、入眠の意識付けが習慣化できて効果的でしょう。
──なるほど。食生活や入浴では、どんなことに気をつけたら良いですか?
米田:食生活では、夜寝る前の2時間ぐらいの間にはなるべくものを食べないほうが良いでしょう。消化活動で胃腸が起きていると、眠りが浅くなってしまいやすいからです。また、朝は起きたら朝ご飯を抜かずにきちんと食べることも大切です。
入浴ですが、睡眠の2時間くらい前のタイミングがベストの時間帯です。お湯に浸かると身体の深部の体温が上がり、その後徐々に下がります。眠気は体温が下がる時に起きるため、入浴から2時間後ぐらいがちょうど眠りに入りやすくなるんです。
──ちなみに、良い睡眠を意識して運動をするならいつ頃がおすすめですか?
米田:睡眠の質を高めるには、午前中の運動が適しているといわれています。午前中に時間が取りにくいのなら、夕方でも良いでしょう。睡眠時は「疲労回復ホルモン(=成長ホルモン)」がはたらく時間帯なのですが、日中に運動することで夜眠ってから疲労回復ホルモンが分泌されます。毎日の眠りでしっかり疲れを回復させることにもつながりますから、運動する習慣は大事ですね。
「眠りの研究家」米田さんご自身が良く眠るための秘訣や、快眠の鍵になるアイテムは?
──ここからは、米田さんご自身の「睡眠」についてお伺いします。米田さんが良い睡眠のために日々実行していることや、気を付けていることはありますか?
米田:私の場合も、先に申し上げた通りで睡眠時間を7時間程度はしっかり取ることですね。幸い、私自身は日ごろ良く眠れているので不眠や寝つきに関する悩みはあまりない方だと思っています。あとは寝る前にスマホやパソコンを見過ぎないようにすることや、寝るときの服装に気を配ることでしょうか。
パジャマなど寝るときの衣類は、肌触りが良く通気性にすぐれたものを選ぶと快適な睡眠の助けになります。私自身の経験上からも、分厚く重い素材や硬い生地の衣類は睡眠時には不向きだと考えています。普段着のまま眠ってしまわず、就寝時専用の衣類に着替えて眠ることがとても重要だと感じますね。
──なるほど。眠るときには寝具だけでなく、衣類選びも大切ですね。ちなみに、良い睡眠をサポートするために気軽に取り入れられるおすすめのアイテムはありますか?
米田:こちらも先に少し申し上げましたが、快適に眠れる「枕」と「敷布団」だと考えています。特に、頭を支えている枕は良質な睡眠のために大切なアイテムです。良い枕を選ぶには、「高さ」、「硬さ」、「安定性」の3要素がポイントになります。できれば実際に枕を試してみて、あごが引けてしまわずスムーズに呼吸ができる高さと、寝返りなどをしても安定性を損なわない適度な硬さを備えたものが良いでしょう。枕が合っていないと、寝るときの姿勢にも影響してなかなか良く眠れないはずです。「仰向けに寝てみて、あごが引けないこと」「仰向け寝でも横向き寝でも変形しすぎず、安定感があること」は、身体に合った枕を選ぶために特に重要なポイントです。
──ありがとうございます! 米田さんは、枕に関するお悩み相談も受けつけているそうですね。
米田:はい、お店にお問い合わせいただくお客様にも、特に枕に関するお悩みをお持ちの方が多いことから、Eメールによる「枕の相談」を始めました。枕選びのプロであるピローアドバイザーとしての経験を活かし、日本全国の皆さんへ枕選びに関するアドバイスを行っています。
睡眠に関するお悩みを抱えた多くの方に向け、良い眠りによる健康で快適な毎日を提案してきた米田さん。北海道内のテレビ・ラジオ番組にも数多く出演し、快眠や寝具選びの頼れるアドバイザーとして活躍されています。
日当たりの良いお店の中には大人に向けたお布団や枕だけでなく、赤ちゃんのための上質で可愛らしい寝具も数多く展示されています。ほのぼのとした住宅街の一角の、思わず笑顔がこぼれる「小さな幸せ空間」で、貴重なお話を聞かせていただきありがとうございました。
ふとんのヨネタ(小さな幸せを創る有限会社)
〒002-8028
北海道札幌市北区篠路8条4丁目1-64
https://www.yoneta.jp/
ライター: 市瀬聡美
1990年代後半より地元・札幌で記者活動を始め、会社員を経て2010年代半ばに専業ライターに。生活情報コラムを中心に執筆しながら、札幌市とその近郊を中心に取材やインタビューなども行う。得意分野は映画・文芸・音楽など文化系全般と、住宅・インテリア・DIYなどのライフスタイル系。
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