頭の切り替え、できていますか?自分自身に向き合い、質の良い睡眠を手に入れよう

身体と心の健康に必要な、正しい休息のススメ

フィットネスインストラクター/健康実践指導者/高齢者体力づくり支援士Dr.土橋珠美さん

20代の頃にエアロビクスに出会い、以後フィットネスインストラクターとして36年勤め、現在も現役で活躍中の土橋さん。人気の講座はすぐにキャンセル待ちになるほどの盛況ぶりです。
今回は、運動ゼロライター鈴木が、これまで行ってきた運動を振り返りながら、良い睡眠をとるために必要な「頭の切り替え」についてお話を伺いました。

一番良いコンディションに自分を持っていける運動を心がける

―今日はよろしくお願いいたします。土橋先生は、音楽に合わせて踊るエアロビクス、階段を上り下りするような動きで足腰を鍛えるステップ台の運動、女性の年齢に応じた運動や体に合わせた運動を提案するボディメンテナンスからアクアウォーキングまで、実に様々な講座を受け持たれていますね。

土橋さん(以下土橋):よろしくお願いします。そうですね、講師歴はエアロビクスが一番長いのですが、年代によって必要な運動があるので、幅広い方に運動の楽しさをお伝えできるよう、女性に向けた様々な講座を開講しています。

―すごいですね。私はウォーキングに出かけるだけで疲れていましたが、先生は講座をいくつも受け持たれていて疲れを感じることはありませんか?

土橋:疲れは感じませんね。私にとって運動をしていることが元気でいられる源ですから。運動にも色々ありますが、一番いいコンディションに自分を持っていける運動ができるといいですね。

―一番いいコンディションに自分を持っていける運動、それは具体的にどのようなことですか?

土橋:まず大切なことは、やっていて「楽しい」と思う運動であること。次にそれが生活に役に立つ運動であるということです。運動の種類は何でも構わないのですが、続けられるものを何か見つけられるといいですね。体の中からじわーっと暖かくなるような運動は血流やリンパの流れも良くなります。
運動をすることで体の動きがスムーズになり、例えば階段の上り下りが楽になった、子供と思い切り遊んでも疲れにくくなった、ぐっすり眠れるようになった・・・など、毎日の生活に変化が見られると運動の効果を実感しやすいですよね。運動をすることで体に余裕を持てるようになると、心まで余裕がでてきます。疲れてイライラしてしまうことってありますよね。そんな方にもぜひやっていただきたいです。

睡眠前の頭の切り替えに必要な『呼吸』の秘訣

―運動と睡眠は深く関係しているそうですが、ウォーキングに目覚めた私が頑張ってたくさん歩いても、よく眠れていない日がありました。運動すれば必ず良く眠れる、というわけではないのでしょうか?

土橋:ウォーキング、がんばりましたね!たくさん歩いたのに眠れなかった・・・多分それは自律神経が関係していると思います。
自律神経には活動している時に働く交感神経、リラックスしている時に働く副交感神経の二つに分けられますが、この「頭の切り替え」がうまくいかないと良い睡眠につながりません。特に女性は40代頃になると交感神経が高まる時間が多くなり、睡眠が取りにくくなってくる傾向にあります。就寝前に今日あったことを振り返ったり翌日の予定を確認したり・・・色々と頭を使っていませんか?このように考え事をしながら眠りにつこうとすると、交感神経から副交感神経への切り替えがスムーズに移行できないのです。適度な運動で疲れているなら、体は休みたがっていたはずです。ぐっすりと質の良い睡眠で体を休めてあげるために、眠る前に頭から雑念を取り去る時間を作ることをお勧めします。

―なるほど、確かに同時進行で色々なことを考えますね。就寝前もとにかく色々な考えにまみれているかもしれません。翌日の予定はもちろん、お弁当の中身や冷蔵庫の中身を考えたり、仕事であったことを振り返っていたり、子供の赤鉛筆を買い忘れた!なんてことが頭をよぎることも。でも、そのような雑念を取り去るってどうすればいいのでしょうか?

土橋:交感神経から副交感神経へ移行する「頭の切り替え」ができると意外と簡単にできます。ポイントは呼吸の仕方。鼻から大きく息を吸い、なるべく口ではなく鼻からゆっくりはき出し、深い呼吸を心がけます。また、体を通り抜けていく呼吸の音を感じたり、息を吸って大きく広がる胸、息を吐くと沈んでいく体など、体の動きや変化に意識をのんびりと向けていくと、次第に雑念から解放されていきます。万が一それでも頭に何か浮かぶようなら、「雑念、雑念・・・」と頭の中で唱えてみてもいいですね。リラックスした状態でそのまま自然と睡眠に導かれるのを待ちましょう。はじめは時間がかかるかもしれませんが、慣れてくるとスムーズに切り替えができるようになります。

お勧めのストレッチがありますのでいくつかご紹介しましょう。呼吸を深め、血流を促しますので、就寝前にもおすすめです。ゆっくりと呼吸することを心がけながら、ぜひ一度お試しください。

ストレッチ1:胸と背中の筋肉を緩める運動

  1. 1.後ろで手を組み、ゆっくりと深く息を吸い込みながらお腹を広げ、背骨を伸ばして胸を張ります。
  2. 2.前で手を組みなおし、背中を丸くして肩甲骨を広げ、両手の中に頭を沈めます。
  3. 3.その状態で左右にゆらゆらと揺らしましょう。

ストレッチ2:腰ともも裏の筋肉を緩める運動

  1. 1.布団の上に寝転んだ状態で片足を抱え込み、ゆっくりと呼吸します。
  2. 2.曲げた足を伸ばし、太腿の裏の筋肉をほぐします。(*余裕のある方は伸ばしていない方の足は膝を曲げずに伸ばしましょう)
  3. 3.両足が終わった後はゆっくりと手足を伸ばし、深く呼吸をしながらくつろぎましょう。

―「頭の切り替え」に導く運動、就寝前のルーティンにすれば毎日熟睡も夢ではないですね。

土橋:そうですね。年齢が上がり、シニア世代になると自分自身に向き合ってきた方とこなかった方では差がついてきてしまいます。ぜひ、自分の体に耳を傾けながら毎日の生活に楽しいと思える運動を取り入れ、1日の終わりには自分の体に向き合って労ってあげましょう。きっと質の良い睡眠につながり、生活にゆとりが生まれることになると思います。

今回、インタビューをさせていただき、土橋先生の柔らかな安心感のある印象の中に凛とした素敵な姿を垣間見ることができました。気がつけば運動ゼロライターも40代突入、体の変化を感じるお年頃です。気持ちはまだ若いつもりでも、体は正直です。ごまかすのではなく、しっかりと自分に向き合っていきたいと思います。

ライター:鈴木 有芙子(すずきゆうこ)
長野県に移住して12年。
3人の子供を育てながら、フリーで活動。
“運動ゼロライター”からの卒業を目指し、毎日の運動に励む。

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