α-アルブチン
α-アルブチン
α-アルブチン(アルファアルブチン)は、江崎グリコが独自の配糖化酵素を利用して開発した、ハイドロキノンにブドウ糖をα結合で転移させた物質です。マイルドな酵素合成法により、効率的にα-アルブチンのみを量産化することに世界で最初に成功しました。
α-アルブチンが、シミ・ソバカス・日焼けの原因となるメラニン(※1)を生成するチロシナーゼに作用して、メラニン(※1)の生成を強力に抑制する効果があることを発見しました。江崎グリコのこれまでの研究成果は、多くの学術誌に論文として発表されており、また学会でも発表しています。(関連論文・学会発表参照)
2002年より、美白用化粧品原料として世界中で販売を開始しており、日本を始め世界各国の多くのユーザー様にご利用いただいています。なお、海外はDSMニュートリショナルプロダクツが、日本国内はDSMニュートリションジャパン(株)が販売しています。
また化粧品原料としての販売に際して、物理化学的性質や安定性や安全性に関する各種試験ならびに、酵素レベル・細胞レベル・ヒトレベルでの効果確認試験を実施しており、これらの試験結果をデータとして所有しています。
α-アルブチンは、品質の保証はもちろんのこと、安全性や有効性に関するデータも充実しており、ユーザー様に安心してご使用していただける化粧品原料です。
※1 メラニン | 種々の動物の組織内にある褐色ないし黒色の色素です。一般にフェノール化合物、特にチロシンから黒色素胞およびメラノサイトの中で生合成され、その量により毛髪や皮膚および目の網膜の色が決まります。 |
構造および製造方法
独自に開発した配糖化酵素により、ハイドロキノンにブドウ糖をα結合で転移し、α-アルブチンのみを効率的に製造します。
α-アルブチンの働き
紫外線やストレスによって皮膚の中で生じたフリーラジカル(活性酸素)(※1)の刺激で、メラノサイト(※2)中では、メラニン(※3)生成の原因となる酵素チロシナーゼの働きが活発になります。
その結果、チロシナーゼによってメラノサイト内のチロシンからメラニンが合成され、シミ・ソバカス・日焼けの原因となります。
α-アルブチンは、チロシナーゼに直接作用してメラニンの生成を抑制します。
※1 フリーラジカル(活性酸素) | 原子状態の酸素や電子状態が不安定な酸素分子です。生体内では白血球の殺菌作用など多くの生理現象に関与します。細胞を直接的あるいは間接的に傷つけ、老化の一因をつくります。 |
※2 メラノサイト | メラニンを産生する細胞です。恒温動物の表皮内・毛根・脳軟膜・眼球などに散在します。 |
※3 メラニン | 種々の動物の組織内にある褐色ないし黒色の色素です。一般にフェノール化合物、特にチロシンから黒色素胞およびメラノサイトの中で生合成され、その量により毛髪や皮膚および目の網膜の色が決まります。 |
美白効果について
1. 酵素レベルでの検証
シミ・ソバカス・日焼けの原因となるメラニンの生成を強力に抑制します。
<チロシナーゼに対する阻害効果>
アルブチン(β型)はマッシュルームおよびヒト培養細胞由来の両方のチロシナーゼを阻害します。一方α-アルブチンはヒトのチロシナーゼのみを選択的に、かつアルブチン(β型)よりも10倍以上強力に阻害します。
【参考文献】
- a) M. Funayama et al., Biosci. Biotech. Biochem. 59, 143-144 (1995)
- b) K. Sugimoto et al., Chem. Pharm. Bull. 51, 798-801 (2003)
2.細胞レベルでの検証
<正常ヒト皮膚3次元モデルを用いたメラニン生成抑制試験>
α-アルブチンはメラノサイト中でのメラニンの生成を強力に抑制します。
またα-アルブチンの投与を中止するとメラニンの生成能が回復したこと、およびコントロールと比較してα-アルブチン投与区での生細胞数が減少しなかったことから、α-アルブチンは皮膚細胞に損傷を加えることなくメラニン生成を抑制することができます。
【参考文献】
- K. Sugimoto et al., Biol. Pharm. Bull. 27, 510-514 (2004)
<ヒトメラノーマ細胞を用いたメラニン生成抑制試験>
α-アルブチンは細胞増殖に影響を与えない濃度域で、濃度依存的にメラニン生成を抑制します。
3.ヒトでの検証
<美白効果臨床試験 1>
ヒト60人による臨床試験において、α-アルブチンは1ヶ月目から他の美白成分に比べ最も効果的にメラニン生成を抑制します。この効果は、試験期間(3ヶ月)全てにおいて持続していました。
(試験内容)
- 被 験 者:各群20名
- 使用方法:1%配合クリームを1日2回塗布
- 評価方法:1ヵ月後に試験前との明度差測定
<美白効果臨床試験 2>
ヒトでの臨床試験において、α-アルブチンは紫外線により引き起こされる日焼けを効果的に抑制し、その効果は濃度依存的であることが確認されました。
(試験内容)
- 被 験 者:23名
- 使用方法:各クリームを1日2回塗布
- 紫外線照射:1回(試験開始日)
- 評価方法:紫外線照射直前との明度差を評価
製品規格
製品規格
*の値は、固形分換算
性状 | 白色粉末 |
α-アルブチン含量 | 97%以上* |
融点 | 196~202℃ |
比旋光度 | 180±6° |
溶状 | 無色透明(1g→30ml水溶液:A430nm<0.03) |
乾燥減量 | 1.0%以下 |
荷姿
1kg(アルミパウチ)/カートン入り
表示名称
- INCI-NAME : Alpha-Arbutin
- 日本語名称 : α-アルブチン
関連論文・学会発表
関連論文
- 「Purification and Some Properties of α-Amylase from Bacillus subtilis X-23 That Glucosylates Phenolic Compounds Such as Hydroquinone」T. Nishimura et al., J. Ferment. Bioeng. 78, 31-36(1994)
- 「ハイドロキノン-α-グルコサイドによるメラニン生成抑制効果」(日本語)T. Nishimura et al., Yakugaku Zasshi 115, 626-632(1995)
- 「酵素法によるα-アルブチンの生産と応用」(日本語)西村隆久, バイオサイエンスとインダストリー 61, 259-260(2003)
- 「美白化粧品素材α-アルブチンの紹介」(日本語)杉本和久, J. Appl. Glycosci. 50, 109-110(2003)
- 「Syntheses of Arbutin-α-glycosides and a Comparison of Their Inhibitory Effects with Those of α-Arbutin and Arbutin on Human Tyrosinase」K. Sugimoto et al., Chem. Pharm. Bull. 51, 798-801(2003)
- 「The More Effective, Faster and Safer Approach to Skin Lightening and Liver Spot Minimizing」H. Ziegler et al., PERSONAL CARE January, 15-18(2003)
- 「Inhibitory Effects of α-Arbutin on Melanin Synthesis in Cultured Human Melanoma Cells and a Three-Dimensional Human Skin Model」K. Sugimoto et al., Biol. Pharm. Bull. 27, 510-514(2004)
- 「Syntheses of α-Arbutin-α-Glycosides and Their Inhibitory Effects on Human Tyrosinase」K. Sugimoto et al., J. Biosci. Bioeng. 99, 272-276(2005)
- 「ハイドロキノン配糖体のチロシナーゼ阻害効果およびα-アルブチンのメラニン生成抑制効果」(日本語)杉本和久ほか, FRAGRANCE JOURNAL 33, (5) 60-66(2005)
- 「Experimental study on cross-reactivity of α-arbutin toward p-phenylenediamine and hydroquinone in guinea pigs」K. To-o et al., J. Dermatol. 37, 455-462(2010)
- 「Development of α-Arbutin: Production at Industrial Scale and Application for a Skin-Lightening Cosmetic Ingredient」K. Sugimoto et al., Trends Glycosci. Glycotechnol., 19, 235-246(2007)
学会発表
- 「α-アルブチンのメラニン生成抑制効果-第1報-」野村耕司ほか, 日本生物工学会2002年度大会
- 「α-アルブチンのメラニン生成抑制効果-第2報-」杉本和久ほか, 日本生物工学会2002年度大会
- 「Inhibitory Effects of Several Types of Hydroquinone Glycosides on Human Tyrosinase and Melanogenesis Inhibition of Alpha-Arbutin」T. Nishimura et al., IFSCC 2003
- 「Melanogenesis Inhibition of α-Arbutin and Inhibitory Effects of Various Types of Hydroquinone Glycosides on Human Tyrosinase」K. Sugimoto et al., The Ninth Japan-China-Korea Joint Symposium on Enzyme Engineering (2006)
- 「Enzymatic Synthesis of Glycosides using Alpha-Amylase Family Enzymes」K. Sugimoto et al., 4th International Symposium on Biocatalysis and Biotechnology (2008)
サンプル依頼およびお問い合わせ
サンプルのご依頼や商品に関するお問い合わせを受け付けております。
■電話でのお問い合わせ
お問い合わせ先 | グリコ栄養食品株式会社 技術営業部 〒555-8502 大阪市西淀川区歌島4-6-5 TEL.06-6477-8281 |
販売元 | DSM株式会社 〒105-0011 東京都港区芝公園2-6-3 フロントタワー TEL.03-5472-1811 |
■メールでのお問い合わせ