クラスター デキストリン®(食品用原料)
製品情報
1. 世界で初めて開発に成功した高度分岐環状デキストリン「クラスター デキストリン」
クラスター デキストリンは、Glicoグループが世界で初めて開発に成功した高分子のデキストリン(高度分岐環状デキストリン)です。原料となるワキシーコーンスターチにブランチングエンザイム(※1)という酵素を用いることで、デンプンの基本的な構造単位であるクラスター構造をほぼそのまま保持しています。様々な機能・効果が確認されており、幅広い用途で国内にとどまらず国外でも利用されています。
※1 ブランチングエンザイムは、動物、植物、微生物に広く存在する糖転移酵素です。澱粉の成分であるアミロペクチンのクラスター構造の継ぎ目に特異的に作用し、環状化を行いながら分解します。
2. 高分子かつ分子量分布が狭く、鎖長が長いデキストリン
一般的なデキストリンの製造法では、原料となる澱粉がランダムに分解されるので、高分子を目的としたデキストリンを製造しようとしても低分子のデキストリンや未分解の澱粉が一定量含まれます。一方でクラスター デキストリンは、ブランチングエンザイムによる特異的な分解により、高分子かつ分子量分布が狭く、鎖長が長いデキストリンとなります。
3. 高分子でありながら高い水溶性と溶液安定性
一般的に高分子デキストリンの欠点の一つは、溶液の安定性が低いことです。クラスター デキストリンは高分子でありながら高い水溶性と溶液安定性を示すため、一般的な高分子デキストリンでは難しい飲料用途への利用も可能です。
4. 甘味や粉臭さ(デンプン臭)がほとんどない
クラスター デキストリンは精製度が高く、低分子の呈味物質が少ないので甘味がほとんどなく、またデンプン様の物質も残留していないので粉臭さもほとんどありません。
5. 一般のデンプンやデキストリンと同様の消化性を確認
クラスター デキストリンは、体内の消化酵素により、一般のデンプンやデキストリンと同様に容易に消化されます。環状構造部分もヒト唾液α-アミラーゼにより完全に分解されることが確認されています。
6. 幅広い用途で利用可能
特殊な構造および性質から、<マスキング用途><粉末化基剤用途><物性改良剤用途><スポーツニュートリション用途>と幅広い用途に利用が可能です。
● 風味改良用途 食品中の好ましくない風味・呈味の軽減
● 粉末化基剤用途 吸湿防止、成分劣化の抑制
● 食品の物性改良剤用途 サクサク食感の付与、増粘剤等の粘度コントロール
● スポーツニュートリション用途 素早い吸収性と持続性のあるエネルギー源として
製品特徴
- 名称:食品用デキストリン(高度分岐環状デキストリン)
- 表示例:①デキストリン ②澱粉分解物
- 宗教対応:コーシャ/ハラル認証取得
- 由来原料:ワキシーコーンスターチ
- 高分子かつ分子量分布が狭く、鎖長が長い
- 高分子ながら高い溶解性と溶液安定性
- 甘味や粉臭さ(デンプン臭)がほとんどない
風味改良用途(マスキング用途)
【 主な機能 】
◆ 鎖長部のらせん構造が呈味・香気成分を包接し、マスキングする
◆ 鎖長のグルカン鎖間が呈味・香気成分を抱え込み、マスキングする
【 検証データ 】
✔検証データ1. 香味成分のマスキング
香気成分分析機器の電子嗅覚システムHERACLESⅡもしくはガスクロマトグラフィを用いてマスキング効果について分析を実施しました。
イオン交換水とクラスター デキストリン配合溶液に各香気成分を同濃度になるよう溶解し、2時間静置後の香気成分量を測定し抑制率を算出しました。
香気成分量の変化
✔検証データ2. 呈味成分のマスキング
呈味成分分析機器の電子味覚システムASTREEを用いてマスキング効果について分析を実施しました。
イオン交換水とクラスター デキストリン配合溶液に各呈味成分を同濃度になるよう溶解し、溶解直後の呈味の数値変化を抑制率として算出しました。
呈味成分量の変化
【 活用例 】
活用例1. 米飯製品の保存性を向上するpH調整剤(グルコン酸)のマスキング
テレワーク推進による在宅勤務の増加、単身世帯や少人数世帯の増加など、ライフスタイルの変化により、パックご飯などの米飯製品の市場が拡大しています。クラスター デキストリンは、長期保存を目的によく使用されるグルコン酸(pH調整剤)の独特の苦みをマスキングすることができます。
活用例2. レトルト処理で発生するレトルト臭のマスキング
簡便ニーズの高まりや個食化などの進行を背景にレトルト食品の需要が高まっています。一方で、レトルト殺菌処理によって発生する各食品のレトルト臭は、おいしさ低下の要因となっています。クラスター デキストリンは、これらレトルト処理によって発生する不快臭をマスキングし、レトルト食品をよりおいしく食べられるようにします。
活用例3. プラントベースフードで注目される大豆タンパクの青臭さ(ヘキサナール)のマスキング
日本国内においてもプラントベースフードが注目され、市場に製品が広まってきています。プラントベースフードの主体となるタンパク源として日本人になじみがある大豆タンパクが多く採用されていますが、大豆特有の風味(青臭さ)がおいしさへの課題となっています。クラスター デキストリンは、大豆特有の風味(青臭さ)をマスキングし、癖のない風味にすることができます。
粉末化基剤用途
【 主な機能 】
◆ 低分子のデキストリンをほとんど含まないため吸湿しにくく、溶解時にダマになりにくい
◆ 高分子かつ分子量分布が狭いため被膜性が高い
◆ 鎖長部のらせん構造により物質を包接することで風味成分をマスキングする
◆ 甘味や粉臭さ(デンプン臭)がほとんどないため、素材の風味を損なわない
【 活用例 】
活用例1. 油脂の粉末化と酸化安定性向上
吸湿しにくく、被膜性の高いクラスターデキストリンを粉末油脂の基剤として利用することで、一般的なデキストリンと比較して、ブロッキング(固結)しにくい、褐変が起きにくい、油脂の酸化安定性が向上するなどの特長が得られています。
●ブロッキング、褐変が起きにくい
油脂含量69%の粉末魚油を作成し、37℃、70%RH(相対湿度)にて約1.5ヶ月間保管しました。デキストリンDE18を用いた粉末魚油と比較した結果、ブロッキングおよび褐変がほとんど起きないことが確認されました。
●油脂の酸化安定性向上
油脂含量69%の粉末魚油を作成し、70%RH(相対湿度)にて保管し、経時的にPOV(過酸化物価)を測定し安定性に関して評価しました。デキストリンDE4、DE11、DE18を用いた粉末魚油と比較した結果、デキストリンDE4とDE11と比べて高い酸化安定性を示すことが確認されました。DE18とは同等の安定性を示していますが、上述のデータの通りDE18の粉末油脂はブロッキングおよび褐変という問題が起きていました。
活用例2. ペースト状製品(食品)の粉末化と安定性向上
近年では食品ロスやSDGsへの関心の高まりから、食品製造で発生する副産物の有効活用が盛んにおこなわれており、その加工技術として粉末化も多く用いられています。しかしペースト状や吸湿性の高い副産物は粉末化が難しく、粉末化できたとしても経時的にブロッキングが起きるといった問題が生じますが、クラスター デキストリンは、吸湿性が低く被膜性が高いため、ペースト状製品(食品)の粉末化を可能にし、さらにブロッキングを防止することが可能です。
●ブロッキングが起きにくい
柚子皮ペーストをデキストリンDE20およびクラスター デキストリンを用いて粉末化しました。15℃、70%RH、2時間の保存テストを実施した結果、デキストリンDE20の粉末品は顕著なブロッキングが発生していたにもかかわらず、クラスター デキストリンの粉末品はさらさらな状態を維持することが確認されました。
*柚子皮ペーストの事例は香川県の株式会社四国総合研究所で販売されている「柚子粉末S-02」となります。「柚子粉末S-02」は和・洋菓子や調味料等にご利用できます。「柚子粉末S-02」のお問い合わせは、株式会社四国総合研究所営業部(TEL.087-844-9208)へお願いします。
食品の物性改良用途
【 主な機能 】
◆ 高分子かつ分子量分布が狭いため被膜性が高い
◆ クラスター デキストリンは増粘剤の発現した粘度をコントロールする
【 活用例 】
活用例1. フライ食品のサクサク感向上
高分子かつ分子量分布が狭いデキストリンであるクラスター デキストリンは被膜性能が高いため、フライ食品における衣のサクサク感を向上することが可能です。
活用例2. 米飯食品や調理麺のほぐれやすさ向上
クラスター デキストリンは様々な増粘剤において発現した粘度を低下させることが判明しております。その効果を活かすことで、澱粉の粘度発現による米飯食品や調理麺におけるほぐれにくさの問題を解消することが可能です。
スポーツニュートリション用途
【 主な機能 】
◆ 高分子かつ分子量分布が狭いため、
溶液の浸透圧が低い
◆ 高分子ながら高い水溶性と溶液安定性を示す
◆ 一般のデンプンやデキストリンと同様の消化性を
確認しておりエネルギー源となる
◆ 甘味や粉臭さ(デンプン臭)がほとんどないため
摂取しやすい
【 活用例 】
活用例. 運動に必要な成分をスピーディーに摂取可能なスポーツドリンク設計が可能
エネルギー、水分、ミネラルを同時にかつ速やかに補給できる理想的なスポーツドリンクの設計には、摂取後、胃から小腸へ早く移送されるような適正浸透圧(150mOsm程度)が必要です。しかし、一般的な糖質をエネルギー源として用いると、糖質源のみ、もしくはミネラルを配合したスポーツドリンク設計にすることで適正浸透圧を超えてしまいます。クラスター デキストリンは高分子かつ分子量分布が狭いことで溶液の浸透圧がほとんどあがらず、追加でミネラルなどの電解質を配合することで、水分と栄養源をスピーディーに摂取することができる理想的なスポーツドリンクを設計することが可能です。
【 検証データ 】
✔ 検証データ1. 摂取後の運動時における胃の負担軽減
同濃度のクラスター デキストリンもしくは他の糖質を配合したスポーツドリンクを摂取した被験者において、運動時における胃の負担に関して調査を実施しました。クラスター デキストリン配合区は他の糖質配合区よりも曖気(げっぷ)の回数が少なく、また胃の不快感に関するアンケートのスコアにおいても軽減している結果が得られました。クラスター デキストリン配合区は胃から小腸へ素早く移送されたことが要因と考えられ、胃の負担が軽減することで運動時のパフォーマンス低下を防ぐことが期待できます。
作図:TAKII et al., Food Science Technol. Res.,10(4), 428-431,2004
✔ 検証データ2. 持久力の向上
同濃度のクラスター デキストリンもしくは他の糖質を摂取したアスリートスイマーにおいて、疲労困憊となるまでの遊泳可能時間を測定し持久力への影響を調べました。調査の結果、クラスター デキストリンを摂取した際は他の糖質を摂取した際と比べて約1.5倍長い時間遊泳が可能であることが示されました。このことからも、クラスター デキストリンは、エネルギー源として持久力の向上に期待できます。
作図:SHIRAKI et al., Food Science Technol. Res.,21(3),499-502,2015
✔ 検証データ3. 運動時の疲労軽減
同濃度のクラスター デキストリンと他の糖質を摂取した日常的に運動している男性24名を対象に、運動時の疲労感に違いが出るかVAS法を用いて評価を実施しました。クラスター デキストリンを摂取した際は他の糖質を摂取した際と比べて運動時の疲労感が軽減することが確認されました。疲労感が軽減することで、運動時のパフォーマンス低下を防ぐことが期待できます。
作図:Furuyashiki et al., Bioscience, Biotechnology, and Biochemistry.,78(12),2117-2119,2014
✔ 検証データ4. 運動後の炎症ストレスの軽減
同濃度のクラスター デキストリンもしくは他の糖質を含んだスポーツドリンクを摂取したトライアスロン選手7名において、デュアスロン競技(10 km ランニング+40 km サイクリング)によって発生する体内のストレス(炎症ストレス)に違いが出るか調査を実施しました。その結果、クラスター デキストリンが配合されたスポーツドリンクを摂取した場合、炎症ストレスを示す複数のバイオマーカーが軽減する結果が得られました。競技によって体内で発生するストレスが軽減することで、運動時のパフォーマンス低下を防ぎ、また運動後の疲労回復に貢献できることが期待できます。
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