たべもの事典 グルテンについて学ぼう!!たべもの事典 グルテンについて学ぼう!!

たべもの事典 グルテンについて学ぼう!!

グルテンってなに?

グルテンとは、小麦の種の中にたくわえられた栄養素(えいようそ)のひとつ。私たちの体を作るのに必要なアミノ酸(さん)からできているたんぱく質なんだ。昔から日本では、グルテンを多く含む「麩(ふ)」がおぼうさんの精進料理(しょうじんりょうり)に使われたりして、古くから親しまれているんだよ。今でも、「麩」はもちろん、いろいろな食品に入っていて、食品をおいしくしたり、パンをふくらませたり、おいしい麺(めん)ができるのもグルテンのおかげなんだ。

なにに使われているの?

  • パンパン
    パン
  • 魚肉ソーセージ魚肉ソーセージ
    魚肉ソーセージ
  • 麺(めん)麺(めん)
    麺(めん)
  • かまぼこかまぼこ
    かまぼこ
  • 麩(ふ)麩(ふ)
    麩(ふ)

グルテンの性質

グルテンの一番の特徴(とくちょう)は、何と言っても他のたんぱく質にはないガムのようなのび!他のたんぱく質にはない特徴(とくちょう) だからとってもおもしろいんだけど、昔は食品に混ぜこむのがけっこう大変だったんだ。

そこで、考えられたのが活性(かっせい)グルテン。活性グルテンとは、グルテンを粉末状に乾燥(かんそう)したもので、水を加えるだけで乾燥前とほとんど同じ性質になるんだ。粉だから食品中にかんたんに混ぜることもできるし、乾燥してるから室温でもくさらない。使いたいときに使いたいだけ使えるからとっても便利なんだよ。
この活性グルテンの誕生(たんじょう)で一気に、グルテンが食品に使われるようになったんだ。

粉末状のグルテンができたから、食品に使われるようになったんだね。粉末状のグルテンができたから、食品に使われるようになったんだね。
  • グルテングルテン
    グルテン粉末状に
    乾燥(かんそう)
  • 活性グルテン(粉末状)活性グルテン(粉末状)
    活性グルテン(粉末状)水を加えると元に戻る

さまざまに変化するグルテン

  • さらにこんなにのびる!
    さらにこんなに
    のびる!
  • 工夫すると
    他のたんぱく質にはない「のび」が特徴
    他のたんぱく質にはない「のび」が特徴100℃で
    加熱
  • 硬いゲル状に!
    硬いゲル状に!

ドウってなに?

ドウとは「練ってできるかたまり」という意味で、パンの生地をドウと言うこともあるよ。粉末状のグルテンに水を加えてこねていくと、だんだんまとまってかたまりができるよ。これがグルテンのドウなんだ。グルテンのドウは分子※と分子が強い結合でつながっているんだ。そしてこの結合が、グルテンのドウのかたさやのびなどの性質には重要なんだ。※分子:物質をつくっているとても小さい粒

ドウはよくのびて弾力(だんりょく)があるのが特徴(とくちょう)なんだけれど、グルテンのpH※や温度、乾燥(かんそう)方法によってそののびやかたさにはちがいがあるんだよ。そのちがいを見てみよう!※pHとは、液体の酸性(さんせい)やアルカリ性を数字で示したものだよ。数字が7より小さいものが酸性、7が中性、7より大きいものがアルカリ性というよ。

pHによるちがい

レモン汁(じる)をなめるとすっぱいよね。これは液体が酸性(さんせい)になっているからなんだけど、液体が、酸性、中性(ちゅうせい)、アルカリ性になると、ドウにもちがいがでてくるんだ。実際に、みんなにもなじみのあるレモン汁(酸性)やオレンジジュース(酸性)、水(中性)を使ってちがいを調べてみたよ。

酸性のドウはよくのびてやわらかくなるよ。酸性のより強いレモン汁で作ったドウはさらによくのびるよ。これは、グルテンのドウの中にある分子の結合の数が酸性では切れて減るためなんだ。

  • 水(中性)
    水(中性)水(中性)
  • オレンジジュース
    オレンジジュース結合が切れる
  • レモン汁(より酸性が強い)
    レモン汁(より酸性が強い)結合が切れる
ちなみに、酸性とは逆のアルカリ性のドウは、分子同士の結合が強くなるよ。

ちなみに、酸性とは逆のアルカリ性のドウは、分子同士の結合が強くなるよ。

結合が強くなる
PHのちがいでのびやかたさがぜんぜんちがうね!

温度によるちがい

冷水、常温の水、温水で作ったドウにはどんなちがいがあるのか見てみよう!冷水ではかたくてのびにくく、温水ではやわらかくてよくのびるようになるよ。これは、グルテンの分子が冷たいところでは元気に動き回ることができないけれど、温かいところでは元気に動き回ることができるからなんだ。

冷水 常温の水 温水 温度が高いと分子の動きは活発になるんだ冷水 常温の水 温水 温度が高いと分子の動きは活発になるんだ

乾燥方法(かんそうほうほう)によるちがい

スプレードライ法とフラッシュドライ法で作られたグルテンのドウのちがいを見てみよう!
スプレードライ法のドウはやわらかくてとてもよくのびるよ。フラッシュドライ法のドウはかたくてのびにくいんだよ。

ゲルってなに?

ゲルとは「コロイド※溶液(ようえき)が固まって半固体(はんこたい)や固体(こたい)の状態(じょうたい)になったもの」のことをいうよ。みんなが知っているゲルにはゼリーや豆腐(とうふ)、こんにゃくがあるよ。
グルテンのドウを100℃ のお湯で加熱するとグルテンのゲルができるよ。グルテンのゲルはかたくて弾力(だんりょく)があるんだ。グルテンのドウはよくのびて弾力があるのが特徴(とくちょう)だったね。このドウを加熱してできるゲルはかたくてもっと弾力のある物質(ぶっしつ)になるんだ。麺(めん)のコシにはこの性質がいかされているんだよ。※コロイド:分子がくっついてできた小さな粒子(りゅうし)が散らばっていること

かたさドウ加熱ゲル100℃で加熱加熱ゲルのびかたさドウ加熱ゲル100℃で加熱加熱ゲルのび

ドウを加熱すると、グルテンの分子が元気に動き回って、分子のつながり方が変化するんだ。ドウの状態では分子同士が弱い結合でつながっていたんだけど、ゲルの状態ではとても強い結合でつながれた形に変化するんだ。これがグルテンのゲルがかたくて弾力のある物質(ぶっしつ)になる理由だよ。グルテンの性質には分子と分子の結合が重要な役割を果たしているんだね。

pHによるちがい

酸性(さんせい)、中性(ちゅうせい)、アルカリ性のゲルにはどんなちがいがあるかな。ゲルのかたさは酸性<中性<アルカリ性の順に大きく、のびはアルカリ性<中性<酸性の順に大きくなるよ。

かたさアルカリ性中性酸性のびアルカリ性中性酸性かたさアルカリ性中性酸性のびアルカリ性中性酸性

ゲルはグルテンの分子同士が強い結合でつながっているんだけど、その強い結合をアルカリ性では作りやすく、酸性では作りにくくなるんだ。だからアルカリ性のゲルはかたくなって、酸性のゲルはやわらかくなるんだ。やっぱりグルテンの性質には分子と分子の結合が重要だね!

乾燥方法(かんそうほうほう)によるちがい

グルテンの乾燥(かんそう)方法には、スプレードライ法とフラッシュドライ法があったのを覚えているかな?乾燥方法によってドウにもちがいがあったけど、ゲルにはどんなちがいがあるのか見てみよう!

生グルテンをスプレードライ法で乾燥させたグルテンのゲルはやわらかくてくっつきやすい性質があるよ。フラッシュドライ法で乾燥させたグルテンのゲルはかたくてとても弾力(だんりょく)があるよ。

おうちでグルテンを
作ってみよう

用意するもの

材料:小麦粉100g、水60ml 
器具:スプーン、ボウル

用意するもの 材料:小麦粉100g、水60ml 器具:スプーン、ボウル
  • 小麦粉をボウルの中に入れる。続いて、水を60ml入れて、スプーンですばやくかき混ぜよう。

    小麦粉をボウルの中に入れる。続いて、水を60ml入れて、スプーンですばやくかき混ぜよう。

  • 小麦粉が水をすべて吸ったら、 粉をひたすらこねよう。

    小麦粉が水をすべて吸ったら、
    粉をひたすらこねよう。

  • 生地がまとまって耳たぶくらいのかたさになったら、ボウルにラップをして、30分待とう。

    生地がまとまって耳たぶくらいのかたさになったら、ボウルにラップをして、30分待とう。

  • 生地を水の入ったボウルに入れて両手で力強くもんでみよう!ひたすらもむ。まだまだもむ!ボウルの中の水が真っ白になったら、水をかえて、またもむ。 (ちなみにこの白いのがでんぷんだよ!)

    生地を水の入ったボウルに入れて両手で力強くもんでみよう!ひたすらもむ。まだまだもむ!ボウルの中の水が真っ白になったら、水をかえて、またもむ。 (ちなみにこの白いのがでんぷんだよ!)

  • だんだん水が濁(にご)らなくなってきて、手ざわりが変わってきたら、水から上げてみよう。

    だんだん水が濁(にご)らなくなってきて、手ざわりが変わってきたら、水から上げてみよう。

  • これがグルテンなんだよ。かんたんだね!

    これがグルテンなんだよ。
    かんたんだね!

工場ではどのように
グルテンを作るの?

昔は、グルテンをたくさん取るのは一苦労だったけど、今は工場で大量にグルテンを取ることが出来るんだ。工場での生産だけど、基本的にはこれまで紹介(しょうかい)してきたグルテンの取り方とほとんど一緒。工場の場合は、機械(きかい)が自動的にやってくれるんだ。
グルテンの乾燥法(かんそうほう)にはフラッシュドライ法とスプレードライ法の2種類があって、乾燥法によって性質が変わってくるから、何に使うかによって使い分けられているんだ。工場で生産することで、一度に大量のグルテンが取れるから、安くて良い物がたくさん出来るんだよ。ここで作られたグルテンが、いろんな食品に配合されて、みんなの食卓(しょくたく)に並んでいるんだよ。

  • 熱風液状にしたグルテン製品熱風液状にしたグルテン製品

    スプレードライ法

    霧吹き(きりふき)をイメージしてみよう!霧状(きりじょう)になった液状のグルテンが熱風で一瞬(いっしゅん)で乾燥して粉末状の活性グルテンになるよ。

  • フラッシュドライ法フラッシュドライ法

    フラッシュドライ法

    洗濯乾燥機(せんたくかんそうき)をイメージしてみよう!数ミリ程度に切りきざまれた生グルテンが乾燥機の中をぐるぐる回って乾燥(かんそう)していくよ。

小麦について

小麦はコーン、米と並び「世界三大穀物(こくもつ)」のひとつとして世界中で栽培(さいばい)されているよ。小麦の種子は粉にされ、小麦粉としてうどんやクッキー、パンなど私たちの身近な食品に広く使われているよ。

一言に小麦と言っても実はたくさんの種類があって、いろいろな方法で分類されているよ。栽培(さいばい)や収穫(しゅうかく)の時期、粒(つぶ)のかたさ、粒の色による分類方法などがあるよ。粒のかたさは、含(ふく)まれるたんぱく質の量によって決まっているんだ。特に食品に使われるグルテンとして関係しているのは、粒のかたさによる分類なんだよ。

小麦粉の種類

小麦粉の種類小麦粉の種類

小麦粉中のたんぱく質にはさまざまな種類があるけれど、そのほとんどがグルテンの成分である「グリアジン」と「グルテニン」なんだよ。これらのたんぱく質を多く含んでいるものを「硬質(こうしつ)小麦」、たんぱく質が少ないものを「軟質(なんしつ)小麦」というんだ。硬質小麦と軟質小麦の間のものを「中間質小麦」というよ。硬質小麦からは強力粉、中間質小麦からは中力粉、軟質小麦からは薄力粉(はくりきこ)がつくられるんだ。

強力粉、中力粉、薄力粉のうち、強力粉は主にパンに使われているよ。パンが大きくふくらむのは、発酵(はっこう)中に酵母(こうぼ) がはきだすガスをグルテンがしっかり包んで、生地がふうせんのようにふくらむからなんだ。だから、グルテンを多く含む強力粉はパンを作るのに向いているんだよ。粉末グルテンもこの硬質小麦から分離(ぶんり)されることが多いんだ。中力粉はうどんやかりんとう、クラッカーに使われているよ。特にうどんでは、中力粉を使うことによってなめらかさとコシが現れるんだよ。薄力粉はケーキやクッキー、天ぷら粉に使われているよ。薄力粉はグルテン含量が少ないから、ふんわりと軽い口当たりや油で揚げたときのさっくりとした食感が出るんだよ。