初夏に香る花木として有名なクチナシ(梔子)。その果実から取り出したカロチノイド系色素だよ。中国では古くから、漢方薬として使われていたようなんだ。日本でも、栗の甘露煮(かんろに)や酢の物、漬物(つけもの)等に色づけとして使用されているんだ。主成分はクロシンまたはクロセチンだよ。アルカリにすると、鮮明(せんめい)な黄色になるので「かんすい」を使うラーメンによく使われているんだ。
・ラーメンや惣菜(そうざい)
・キャンディーなどのお菓子
・アイスクリームなどの冷菓 など
「カロテノイド」とも呼ばれ、動物・植物がもつ黄・赤色色素の総称だよ。 天然のカロチノイドには、β-カロチン・リコピン・アスタキサンチンなど、有名なものも含めて600種類以上あるんだ。 クロシンとクロセチンもこれらカロチノイドの一つだよ。 これらは、抗酸化作用(こうさんかさよう:活性酸素を除去し、細胞の老化を防いだりする作用)があるんだ。 動物は、体内で作る事ができないから、野菜や果物から摂取(せっしゅ:食べてとりこむこと)しないといけないんだ。 また、脂溶性(しようせい:油に溶けやすく、水に溶けにくいこと)のものがほとんどだから、脂肪といっしょに食べると効果的だよ。
両方とも天然カロチノイドの一種だけど、特にクロシンが他のカロチノイドと違うのは、水溶性(すいようせい:水にとけやすいこと)の特徴(とくちょう)を持っていることなんだ。
クロシンとクロセチンはクチナシ以外にも、サフランのめしべにもあって、これらは、古代ギリシアやローマ帝国で貴族のための染料として使われてきたんだ。 また、パエリア(スペインの米料理)やブイヤベース(フランスのスープ料理)が黄色いのも、サフランの中にあるクロシンとクロセチンの自然な着色によるものなんだよ。
ベニコウジ色素とは簡単に言うと、ベニコウジ菌が作る色素だよ。 ベニコウジは別名「モナスカス」とも呼ばれていて、日本の代表的な食品である味噌(みそ)やしょうゆを作ってくれる麹菌(黄麹:きこうじ)と同じ仲間なんだ。 ベニコウジ菌は中国、台湾において紅酒(アンチュ)、紅豆腐(ホンフールー)などの発酵食品(はっこうしょくひん)や、漢方薬(かんぽうやく)、紹興酒(しょうこうしゅ)を作るときの原料などなど、昔から一般的な材料として使われていたんだ。 日本の沖縄でも、「豆腐よう」「紅ムーチ(ちまき)」といった伝統食品にベニコウジが使われてきたんだ。 ベニコウジ色素を作る方法としては、米、パン粉などで育てる固体培養法(こたいばいようほう)以外にも、液体培養法(えきたいばいようほう)があるんだ。 色調は深みのある赤色で、「かに風味かまぼこ」の着色をはじめとして、いろいろな食品に利用されているよ。
野菜には赤、緑、黄など、その言葉どおり「色々な」種類があって、みんなの食卓(しょくたく)に彩り(いろどり)を与えてくれるよね。 でも、元をたどっていくと実は同じ仲間だった!なんてこともあるんだ。 例えば、中華料理などにはかかせないトウガラシ、みんなも知っているピーマンとそれを完熟させたパプリカ、これらはみんな「ナス科トウガラシ属(ぞく)」という同じ仲間なんだよ。 この中でトウガラシは辛味成分「カプサイシン」が多く含まれるので「辛味種(からみしゅ)」に、ピーマンやパプリカは「甘味種(かんみしゅ)」に分かれているんだ。だから赤いパプリカは生で食べても甘みがあるように「赤い=辛い」ではないんだよ。 赤い成分はおもに「カプサンチン」という物質で、これを色素に使ったのがパプリカ(トウガラシ)色素なんだ。 また、この「カプサンチン」は油溶性(ゆようせい)で水にとけない物質なので、「乳化」という技術を用いて水の中で分散(ぶんさん)するように作った色素がよく使われているよ。 パプリカとトウガラシのどちらも色素成分が同じという理由で、日本の法律では原材料名にパプリカ色素・トウガラシ色素のどちらを書いてもよい、ということになっているんだ。 これらは、橙色(だいだいいろ)〜赤橙色をしていて、トウガラシそのものを用いるキムチやタレだけでなくオレンジ色をしたいろんな食品に使われているんだ。
クチナシ青色素はその名のとおり、青い色素の代表なんだ。 クチナシ黄色素の主成分は「クロシン・クロセチン」だったけど、クチナシ青色素は「ゲニポサイド」という成分を利用したものだよ。 その昔、アメリカの中部や南アメリカではクチナシ果実の1種を食用として用いただけでなく、ひふにふれると青紫色になるため刺青(いれずみ)にも使っていたんだ。 また、この成分がアジアで使われていたクチナシにも含まれていたことがわかったので青色素として開発されたんだよ。 クチナシ青色素はそれのみで用いるだけではなくてクチナシ黄色素とまぜあわせて緑色の色素を作ることも出来るんだよ。
ラック色素はインド、タイなどに生息するラックカイガラムシのメスが出す樹脂状物質(じゅしじょうぶっしつ)からとれる色素のことだよ。 この樹脂状物質(スチックラック)が色素成分(ラック色素)と樹脂成分(セラック)に分けられて、利用されているんだよ。 スチックラックは古くから漢方薬として利用されていて、日本の正倉院(しょうそういん)にも「紫梗(しこう)」と呼ばれるスチックラックが保存されているんだ。 色素としても古くから利用されていて、古代中国やインドでは染料(せんりょう)として使われていたんだ。色調はあざやかな赤色で、熱や光に強いという特徴から、アメやジュースなどの着色料に使われているよ。 ちなみに表面がつやつやしたチョコレートや粒ガムがあるよね。あれは表面をセラックでコーティングしているんだよ。
中南米がふるさとのベニノキ(紅の木)。 ベニノキはペルー、ブラジル、チリ、ケニアなどで栽培されていて、メキシコではタコス、シチュー、ソースなどに使われている、とてもなじみのあるものなんだ。ベニノキの種はコショウに似た辛味があって、熱帯地方では香辛料(こうしんりょう)として使われているんだよ。 また、そのベニノキの種から取れるのがアナトー色素。 写真のような濃い赤色は加熱することによって赤色〜黄色に変化するんだ。赤色〜黄色のそれぞれの色の特徴を生かして、赤色としては「みそ」や「タレ」に、黄色としては「パン粉」や「菓子」などに使われているよ。
コチニール色素は、中南米の砂漠地帯に生息するウチワサボテンにくっついているカイガラムシ科エンジムシから取れる色素だよ。主成分は「カルミン酸」でコチニール色素は別名「カルミン酸色素」ともいうんだ。 古くは赤色の着色料として南米インカ帝国の時代から衣服や装飾(そうしょく)の色づけに使われていたことがわかっているんだ。また、アメリカでお酒の一種「カンパリ」が開発され、そこに使用されたことでとても有名になったんだよ。 カルミン酸は酸性でオレンジ色、中性で赤色、アルカリ性でむらさき色になるんだ。また、この色素は安全性に関してのデータが世界的に確立された色素のひとつなんだよ。 今ではその赤色の美しさや高い安定性から、お酒だけではなく、世界中で赤色やピンク色に表現したい食品に使われているよ。日本でも、「桜色」のような季節をいろどる食品や「紅白」といったおめでたい食品など日本独自の場面で使用されているんだ。
植物炭末(たんまつ)色素とはいわゆる色素として利用できる「炭(すみ)」のことをさすんだ。 バーべキューの時に使ったり、おうちのにおいを取るために使われていたりしてみんなもよく知っている炭だけど、主成分(しゅせいぶん)はすべて「炭素(たんそ)」なんだ。 炭には作る時の温度によって黒炭と白炭というのがあって600℃から800℃で焼いた炭を黒炭といい、例えばバーベキューなどで使う炭になるんだ。 いっぽう800℃から1200℃の超高温で焼いた白炭は「活性度(炭が色々なものを吸着する面積の大きさ)」が高く、備長炭(びんちょうたん)や活性炭(かっせいたん)として色々なものに使われているよ。 この白炭の不純物(ふじゅんぶつ)をできるだけ取りのぞき、法律で決められた規格(きかく)をクリアしたものが着色料(ちゃくしょくりょう)として使われるんだ。 食品に添加(てんか)すると黒く着色することができ、高級感や印象の強さから、和菓子、洋菓子などで新しいイメージを打ち出した食品に使われているよ。
β-カロチン(ベータカロチン)とはカロチノイド系の代表とも言われるほど、色々な食品に含(ふく)まれているだいだい〜黄色をした成分なんだ。特にニンジン、カボチャ、トマトなど、色のこい緑黄色野菜や果物に多く、ニンジンのだいだい色のもとになっているんだ。「カロチン、カロテン(carotene)」という名前はニンジン(carrot;キャロット)からきているんだよ。このβ-カロチンは体の中に吸収(きゅうしゅう)されるとビタミンAに変わり、免疫力(めんえきりょく)を高めたりするなど色々な効果を発揮(はっき)するんだ。植物は自分でこのβ-カロチンを作ることができるけど、人間や動物は作ることができないんだ。だから、緑黄色野菜を食べることが大事なんだね。また、この色に着目して「色素」として利用するようにしたβ-カロチンもあるんだ。このβ-カロチンはもともと油にしかとけないのでマーガリンなどの油脂(ゆし)食品やクリームなどの着色にすぐれているよ。また、水に分散(ぶんさん)するようにして、より多くの食品に利用できるようにしたものもあるんだ。
カカオ色素はその名のとおり、カカオの豆や外皮(カカオハスク)に含まれている色素だよ。チョコレートやココアの原料としても知られているカカオの原産地は中南米、今のブラジルやベネズエラのあたりだといわれているんだ。カカオはもともと他のくだものと同じように、果実が食べられていたんだけれど、ある時、熱を加えることでカカオ豆がすばらしい味と香りを出すことを発見したんだ。その後、カカオ豆は焼いてすりつぶし、飲み物として利用されるようになっていったんだ。色素として利用するカカオの主成分は熱によって2つ以上くっついたアントシアニンだよ。茶色や褐色(かっしょく)に色づけできて、お菓子やパンはもとよりハム・ソーセージのスモークカラーなどにも利用できるんだ。
アントシアニン系色素は多くの植物が持っている色素で、植物の花や実などの色に関係している色素だよ。ブドウやブルーベリー、赤キャベツや赤ジソなどに多く含(ふく)まれていて、酸性〜アルカリ性で色が変化するんだ。みんなが食べている梅干しは赤い色をしているよね。これは梅を漬(つ)ける時に赤ジソを入れて、その赤ジソからでるアントシアニン系色素で赤い色になっているんだよ。実は江戸時代よりも前までは梅干しは赤くなかったんだ。江戸時代の中ごろに、梅干しをいろどりよく、おいしそうに見せるために赤ジソを入れるように工夫されたんだ。アントシアニン系色素は今ではゼリーやジャム、お菓子や漬物(つけもの)など、さまざまな食べ物に利用されているんだよ。秋にカエデやナンテンなどの葉が赤く色づくのも、アントシアニンの働きによるものなんだ。秋になって植物が葉を落とすための準備をはじめると、葉のつけねの部分にかべができるんだ。すると、葉で作られた栄養は葉の中にとどまることになり、これらを利用してアントシアニンが作られて葉が赤くなるんだよ。イチョウやポプラなどアントシアニンが作られない植物もあって、これらの植物の葉は赤くならずに黄色くなるんだ。
ビートレッドは北アメリカ、ロシア、ヨーロッパ、中東、南米、中国などに分布するサトウダイコンの一種であるアカザ科ビートの根から水またはエタノールで抽出(ちゅうしゅつ)して得られたイソベタニン及びベタニンを主成分としたものだよ。ビートの根の皮は赤くて、中は紅、白、灰色などで断面には紅色または黄色の模様(もよう)があるんだ。古代には薬用として使われていたんだよ。また、ヨーロッパでは色々な料理にも利用されているんだ。代表的なものとしてはウクライナの伝統的な料理「ボルシチ」があるよ。ボルシチはビート、タマネギ、ニンジン、キャベツ、場合によっては牛肉などを炒めてから、スープでじっくり煮込んで作るんだ。この料理の特ちょうである赤色のスープはビートレッドによるものなんだよ。あざやかな赤色である特ちょうを利用して、今日では菓子類、アイスクリームなどの冷菓、生クリーム、チョコレートなどの色々な食品に利用されているよ。みんなの身近なところだと、イチゴ味のチョコレートやアイスクリームなどに使われていることが多いんだよ。
ベニバナの種(たね)から食用油がとられているのは知っているかな?このベニバナの花からは、ベニバナ色素が取り出されているんだよ。 ベニバナ色素の主成分は、サフラワーイエロー(サフロミン)類といって、花から取り出されるよ。ベニバナ色素は酸性に強いから、レモン飲料やキャンディなどに使われているんだよ。また、パエリアに使われるサフランとよく似た色をしていて、高価なサフランの代わりに使われることもあるよ。 これとは別にカーサミン(カルタミン)という水に溶けない成分も含まれていて、赤色色素として、主に化粧品などに利用されているよ。
イカスミは、その名の通りモンゴウイカなどイカの墨袋(すみぶくろ)から取り出したものだよ。 独特の風味があって、地中海地方では調理によく使われているよ。 イカスミを使ったスパゲッティは、知っている人も多いんじゃないかな?その他には、パエリアに混ぜ込(こ)まれることもあるよ。 日本では、1990年代に多くの人に知られるようになって、今ではいろいろな料理に使われているよ。 また、イカスミを乾燥させて粉末にしたものは黒色に着色するための色素としても利用されていて、ソフトクリームやガムなどいろいろな食品に使用されているよ。
クチナシの果実からは、黄色と青色の色素成分が取り出せることを紹介(しょうかい)したね。 (着色料の種類のクチナシ黄色素と、クチナシ青色素だよ。) この2つの色素を混ぜると何色になるか、わかるかな? 黄色と青色を混ぜると、緑色になるんだよ。また、混ぜる量を変えることで、メロンのような明るい緑色や、よもぎ、ピーマンのような深みのある緑色を作ることができるんだ。 パン、菓子、麺、かまぼこ、わさびなどたくさんの食品に利用されているよ。